第12話 記憶
血を流してはいけない。
心の中で叫んだ
あれはまだ、巫女となるために母親と引き離されてすぐ、五歳くらいのころだ。
各地を平定して回った
将軍に任命された大臣が、剣を持ったまま怒鳴る。この地で執政していた王の子を探し出し、服従か死を選ばせるつもりなのだ。あと何人かが見つからないらしく、村人たちを脅している。
今にも
──ならぬ!
三輪山に祀られている神をも従えるため、巫女集団が軍に同行していた。その列の中から、
──この地で血を流してはならぬ。神の怒りに触れよう。民に手を出さぬよう。田畑や川を荒らさぬよう。
何か大きな力に乗り移られた感覚だった。他の巫女たちが駆け寄り、憑かれたように話す
大臣が剣をおさめた。村人たちに安堵のため息が起こる。
横にいた男性が、慌てて彼を平伏させ、顔を隠す。気の遣い方から、父子ではないことが伺える。恐らく主従なのだろう。ということは、三輪族の王の子か。
が、
戦況は、夢の中で垣間見た通りだった。
「これも、謀反を予知した姫のおかげだ。感謝する」
月の障りも終わり、体の具合もよくなって神社へ出仕した
寝込んでいる間、姫はあることが気になっていた。
以前、
では、
そういえば、
「
話しかけて、姫は口をつぐんだ。境内では盗み聞きをされる可能性が高い。彼は得体の知れないところがあり、占いで探っても、ことごとく遮られる。鳥飛びを見破ることができるのだから、自身もそれなりの能力があるはずだ。
「彼がどうした。……
「これからも、うまくやっていって欲しい。謀反を起こす者が出ないように」
やはり、
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