第4話 八十平瓮(やそびらか)
命令口調ではなく、歌うようなしゃべり方なのに、この新しい祭主には貫禄がある。
只者ではないと感じ取ったのか、巫女たちは弾かれたように返事をし、さらに深く頭を下げた。
神殿に御案内しましょう、と
「神殿ではなく、拝殿です。この三輪山そのものが神であり、社殿に神はいらっしゃらないのですから。
自分たちの
砂利道を歩きながら、
「二十名ほどの巫女がいましたが、あれで全員ですか」
「いいえ、今日は出仕していない者が四名おります」
口にしなくても察してもらえると思ったのに、彼は口調も変えずに言い放った。
「ああ、月の障りですか。神は血を厭われるから、そこは守ってもらわねば困ります。厳重に言い渡しておいてください。……ときに、姫の障日はいつでしょうか」
頬どころか耳までも熱くなるのが自分でわかる。何故このような無礼なことを訊かれなければならないのか、と
「……
声が震えないよう、できるだけ平然と答える。
「月が消えると同時に障りが来るとは、まさに巫女姫でいらっしゃる」
嫌味を含んだ笑みを浮かべる髭面の男に、姫の反発心は確かなものになった。
いっそ、彼の祭祀が失敗すれば、と考えかけ、慌てて取り消す。
民のためには、是が非でも
拝殿に入ると、彼はまず、調度品の一つひとつを確認をし始めた。
「これらの祭器は、少し古いですね。すべて、作り直しましょう」
丁寧に扱い、清浄に保ってきたつもりだったが、確かに「
「土は、
「
思わず姫は訊ねた。
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