第3話 祭主交代
翌日、
供として横に控えている巫女が、声をひそめて言う。
「吾は納得できません。姫がよそ者、しかも男の下につかねばならないとは。吾は、姫以外の者を祭主と認めたくありません」
まだ少女の幼さが残る巫女は、頬を紅潮させ、唇をきつく結んでいる。彼女も
「境内の外とはいえ、神のおそばですよ。
言葉には魂が宿るから、不用意なことを言うと何らかの形で自分の首を締めることになる。やんわりたしなめると、彼女はさらに頬を赤くし、「申し訳ありません」と頭を下げた。
しかし、彼女が言ったことは、
「我らは、
はい、と素直に返事をする巫女の瞳が、光を含んでまっすぐにこちらを見ている。口元のわずかな笑みからも、姫への尊敬の念が感じ取れた。それに応えるためにも、毅然としていなければ。
しばらくして、一人の男が坂道を上ってきた。
神域に入ることを気遣ってか、供も連れていない。あの口髭と鋭い目つきは、昨日、鳥飛びで盗み見た
「お待ちしておりました。初めてお目にかかります、巫女頭の
姫が深礼をすると、彼は小さく鼻で笑って言った。
「またお会いしましたな」
昨日の鳥飛びのことを言っているのだ。ぎくりとして顔をあげると、こちらの反応を楽しむかのような嫌味な視線とぶつかった。
姫も負けじと背筋を伸ばし、正面から見据えた。空気がぴりぴりと揺れる。
「鳥飛びで偵察していたことは見破っている」とほのめかすだけあって、彼も巫の能力を持っているようだ。
表面上は和やかに社交辞令を述べ、
言葉ひとつ、身動きひとつに至るまで、お互いがお互いを探っている。若い巫女も張り詰めた雰囲気に気づいたのか、不安げな視線を
神社の入り口である玉垣で、他の巫女たちが新しい祭主を出迎えた。
角度を揃えて一斉に礼をする彼女たちに向かい、
「今日から吾が、この
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