#29 - むかしのように? - Like past days? -

 ――


 ちぃぃぃぃっ……。

 小さな水の音が、幼い女の子の足元から聞こえてきた。

 それはとっても長いようで、あっという間だった。


 未咲「はぁぁ、きもちいい~……」


 右も左もわからないころ(もっとも、いまもなお怪しいけど)の未咲だ。

 となりに人がいても、ためらうことなく外でおしっこするような子だった。


 いまとなってはなつかしい、もう戻ってこないありし日のひとコマ。

 冬の気候は、一部の女の子をめちゃくちゃにするらしい。

 外で用を足すことにまったく躊躇がない、未咲みたいな子が生まれてしまうから。


 ――


 尿道の短さが、この身体で長い時間を過ごしたいまになっても受け入れられない。

 どうしてわたしたちは……そこらへんでしようと思っても、とてもできない。

 どんな人が見ているかわからないし、なによりバレたときの空気が耐えられない。


 わたしはいま、誰もいない道を歩いている。


 自宅から最も近い駅を降りて、家に帰ろうとしている。


 どうしてだろう、得体の知れない寒さを感じる。


 ――誰かいる。


 気づいてしまうと、わたしは動けなくなった。


 そして。


 ぽたっ、ぽたっ……。


 雨の音、にも聞こえる。でも、そうじゃない。これは、わたしがこぼした水。


 近づいてくる足音に、わたしはどうしていいかわからなくなってしまう。


 ――逃げなきゃ。このままだとわたし、襲われる。


 頭ではそうわかっていても、身体がまるで言うことを聞こうとしない。


 そしてついに、姿を表した。


 ??「つかまえた♡」

 玲香「(びくっ!!)」


 全身から力が抜けて、立てなくなってしまった。

 背筋から頭にかけて、寒いものがぞわぞわっと駆け上がっていくようだった。

 気づいたときには、わたしの尻の下には大きな水たまりができていた。


 玲香「(これって、おしっこ……うそ、わたし、こんなところで……)」


 それも気になるけど、後ろにいる人はいったい……?


 未咲「さっきぶりだね、れいかちゃん♪」

 玲香「あ、あんた……っ」


 真っ赤になったわたしは、怒りにまかせて未咲の股を思いっきり蹴り上げた。


 未咲「ぐほっ?!」

 玲香「何さらしてくれてんのよ、こんのばかーっ!」

 未咲「いだっ! やめてれいかちゃんっ、わたし、ちょっとちびっちゃった!」

 玲香「あんたのほうがゆるいんだから、ここで全部ぶちまけなさいよっ……!」

 未咲「やだよそんなの! 痛がりながらおもらししたって気持ちよくないし!」

 玲香「だったら、こうしたらやってくれるわよね……?」

 未咲「えっ……ちょっと、何をするつもりなの、玲香ちゃん?」


 玲香ちゃんの目つきがいつも以上にきつくなって、ただごとではなくなってきた。

 と、思ったのに。


 玲香「ここならだれもいないからきにせずおしっこできるね、みさきちゃん」

 未咲「あれっ?」


 突然のことでびっくりした。あの玲香ちゃんが猫なで声……いや幼い声になった。

 そう、ロリっぽい声優さんが得意としているような、あんな声。


 玲香「あれっ? みさきちゃんおしっこしないの? なんで?」

 未咲「わたしのあれっ? を繰り返さないで! べっ……べつにしたくないよ?」


 言いながら、未咲は顔を赤くした。どうやらいまのところうまくいってるみたい。


 玲香「うそだ! みさきちゃん、さっきからずっともじもじしてるもん!」

 未咲「も、もじもじしてない! いやっ、こっちこないで!」


 ようじょを演じている玲香ちゃんが、わたしを押したおして覆いかぶさってきた。

 まるでおもらししたことを恥ずかしがる女の子が、その恥ずかしさのあまり、

 相手にもそうするように強要しているように。


 玲香「ここをいじっていれば、みさきちゃんだっておしっこしたくなるはず!」

 未咲「やめて、そこおしっこの穴だから! 玲香ちゃん、目を覚まして!」


 パンツ越しにその位置をいち早く探し当てて、玲香ちゃんはそこをこすった。

 純真なようで、やっていることはちょっぴりアブノーマルな変態そのものだ。

 まさか玲香ちゃんにこんな一面があるなんて……わたしの顔は自然と青ざめた。


 玲香「ふふ……そろそろ我慢できなくなってきたみたいね、未咲」

 未咲「だって、玲香ちゃんがっ……」

 玲香「わたしが何よ? もう何もしてないじゃない」

 未咲「さっき、思いっきり、わたしの股いじってた、から……」

 玲香「そんなの関係ないでしょ、女の子なんだから我慢しなさい」

 未咲「そっちだって我慢できなかったくせに!」


 ぱんっ。

 えっ、何? わたしいま、何された?

 正面に見える玲香ちゃんの手は、なぜか赤くなっていた。


 玲香「元はといえばっ……あんたが威嚇おどかしたからでしょっ……!」

 未咲「いや、それはそうだけど……」

 玲香「いまだって震えてる……だからさっき、精神的に幼くなって……っ!」

 未咲「うん、わかった、わかったからはやくどい……」

 玲香「わたしがどれだけ恐怖心に耐えていたか……あんたにわかるの?」

 未咲「えっと、なんとなく……」


 玲香ちゃんが取り乱している間にも、おしっこはわたしのところに滴ってる。

 怖かったのかもしれない。でも正直、この状況に興奮してるわたしがいる。

 いますぐにでも玲香ちゃんにかぶりつきたくてたまらない。もう最っ高。


 未咲「れいかちゃんっ!」

 玲香「未咲?!」


 おしっこがしたいとか、そんなのはもう関係なくなっていた。

 とにかく玲香ちゃんを襲いたくなったし、おねだりしたくもなった。

 あらゆる相乗効果で、わたしの脳はもうぐちゃぐちゃになりそうだった。


 未咲「玲香ちゃん、もう一回わたしのおまたさわってぇ……」

 玲香「はっ?! そんなの嫌よ、さっきあれだけお世話したでしょうに!」

 未咲「それだけじゃ足りないよぅ! ほらぁ、早くぅ~……」

 玲香「嫌ったら嫌!」

 未咲「ふんだ、言うこと聞かない玲香ちゃんはこうしてやる!」

 玲香「ひっ……!」


 わたしはためらいなく、玲香ちゃんの汚れちゃったところに手を伸ばした。

 すると、思いのほか反応がよかった。


 玲香「やらっ、もうこわれたくないのにぃ……!」

 未咲「玲香ちゃんらしくないところ、もっといろいろ見せて?」

 玲香「うぅっ……」


 泣きそうになっている玲香ちゃんが、こんなにかわいいとは思わなかった。

 わたしはいきおいにまかせて、そのくちびるに軽くキスをした。


 玲香「~~~!」

 未咲「すごい、まだまだ出るんだ……わたしもしていいかな?」


 おしっこをたんまり出しきった玲香ちゃんは、ついに何も答えなかった。

 それをいいことに、わたしは玲香ちゃんのことを少し汚してみたいと思った。


 未咲「玲香ちゃん、いまからちょっと顔があったかくなるけど気にしないでね」

 玲香「なにをする、つもり……?」


 息も絶え絶えに玲香ちゃんはそう言ったけど、わたしは気にも留めなかった。

 そのかわりに、玲香ちゃんの顔にあったかいおしっこをプレゼントしようとした。

 パンツは穿いたまま。なんかそのほうが気持ちいいおしっこができそうだった。


 未咲「じゃ、いくよ……♡」

 玲香「……っ!」


 白い湯気が上がって、黄色いおしっこが玲香ちゃんの顔を幾度となく叩いた。


 鼻をつく匂い、かと思えば全然そんなことはなく、どこかいちごっぽい香り。


 玲香「えっなにこれ、あまっ……」

 未咲「でしょー。わたしのとっておきフレーバーなんだ~」

 玲香「おしっこって、こんな甘かったっけ……」

 未咲「なんか、わたしだけっぽいんだよね……

    みんなのおしっこはちゃんとその味なのに、わたしだけいちご味なんだよ」

 玲香「特殊体質、ってやつね」

 未咲「そうそう……あっごめん、まだ出そう……ちゃんと飲んでるよね?」

 玲香「いやいや飲めないわよ……仮にもこれ、おしっこなんだから」

 未咲「もったいないなぁ……せっかくわたしが出してあげてるのに……」

 玲香「そういう趣味はないの。わかったらさっさと出してわたしから離れなさい」

 未咲「はいはい、まったくつれないんだから玲香ちゃんは……」


 残念そうな顔をしながら、未咲がやっとわたしを解放してくれた。

 おしっこをすべて出しきった未咲の表情は、いつも以上に晴れやかだった。


 未咲「はぁーっ、おしっこってやっぱり気持ちいいね」

 玲香「そうね。なんかちょっとだけ昔のことを思い出せたような気がする」

 未咲「そういえば、玲香ちゃんっておもらししやすい子だったっけ?」

 玲香「ときどき失敗してたわ。いまみたいな寒さだったし、どうしてもね……」

 未咲「そっかー、やっぱりみんなそうやって育ってきてるんだね」

 玲香「ところで未咲、さっきから誰かの視線を感じない?」

 未咲「えっ? いや、わたしは感じないけど……」

 玲香「わかった、そこの電柱に隠れてるわ」

 未咲「あっ、ほんとだ」


 わたしたちに指摘されると、何者かがおずおずとその顔をのぞかせた。


 二人「春泉(ちゃん)?」

 春泉「ふぇっ? ち、チガウヨ?」


 間違いなく春泉だった。しかもなぜか足が濡れていて、顔が真っ赤になっている。


 未咲「春泉ちゃんも間に合わなかったの?」

 春泉「さ、さぁ、ナンノコトカワカラナイ……」

 玲香「どう見てもおもらししてるわね、これは……」

 春泉「ち、チガウッテバ……」


 春泉ちゃんはおしっこ臭かった。漏らしてから数分も経ってないだろう。


 未咲「春泉ちゃん家ってこっちのほうじゃないよね? なんでいるの?」

 玲香「あんたも違うけどね」

 春泉「み、ミサキがなんか楽しそうにレイカについていってたから……」

 玲香「とんでもないところを見せてしまったわ、失望したわよね……」

 春泉「ううん、すっごくコーフンした、んだけど……」

 未咲「刺激が強すぎておもらしした、みたいなことを言おうとしてるね……」

 玲香「春泉は、未咲のおしっこって飲んだことあるの?」

 春泉「あるよ」

 玲香「あるのね……」

 未咲「あるんだよね……

    わたしが尿検査わすれたときに、採尿ついでに味わってもらったっけ……」

 玲香「なにそれ、引くわー……」

 未咲「玲香ちゃんもきょう、ちょっとだけ飲んだけどね……」

 春泉「あんなにおいしいおしっこ、ミサキじゃないと出せない気がする。

    うらやましい、って思う。ハルミのおしっこ、超クサいから……」

 未咲「春泉ちゃんのおしっこ、わたしは飲めるんだけどなー」

 玲香「飲めるとか飲めないとかの話じゃないでしょ……普通にダメだっての」

 未咲「そんじゃみなさん、帰りますか!」

 玲香「後味わるぅ……まぁいいわ、金輪際あんたとは会わないことを決めたから」

 未咲「そんなこと言ってぇ~、どうせあしたもちゃんと学校来るんでしょ?」

 玲香「わたしの心の中で、ってこと。身体は会っても、ここでは会わないから」

 未咲「なんか小難しいこと言ってる……じゃまたね、玲香ちゃん、春泉ちゃん!」

 春泉「あっ、ミサキ!」

 未咲「ん? どうしたの、春泉ちゃん?」

 春泉「さっき、ハルミのおしっこ飲めるって言った?

    だったら、その……いますぐここで、いっぱい飲んでいってほしい」


 春泉ちゃんはそう言って、おそるおそる制服のスカートをたくし上げた。


 春泉「じつはハルミ、またおしっこしたい。だから早く、ここに口をつけて!」

 未咲「わぁ、ほんとだ……ぷるぷるしてる……」


 いまにも漏らしてしまいそうな表情を浮かべて、春泉ちゃんは懇願していた。

 わたしはそのことばに導かれるように、春泉ちゃんのおしっこの穴に触れた。


 春泉「あっ、出る……」

 未咲「出していいよ……わたしの口にいっぱいおしっこして、すっきりしてね」


 春泉ちゃんの尿道から、おしっこがいっきに溢れ出した。

 たしかに臭いはきつかったけど、べつに飲めないほどではなかった。


 未咲「どう? 気持ちいい?」

 春泉「うんっ……ハルミ、おしっこ、いっぱいガマンしてたから……」


 このときの春泉ちゃんは、どこか小さい子どものように見えた。

 目をつぶっていて、ひたすらおしっこを出すことだけに意識を向けていた。


 未咲「……終わったね」

 春泉「はぁっ、はぁっ……」


 春泉ちゃんは息を荒くしながら、わたしに倒れ込んできた。

 よく意識を失わずに、立ちながらおしっこできたものだ。称賛に値すると思う。


 玲香「未咲、春泉に何かした?」

 未咲「ううん何も。ただちょっと、がんばりすぎちゃっただけなんじゃないかな」

 玲香「そう、ならいいけど」


 玲香ちゃんは玲香ちゃんなりに、春泉ちゃんを気にかけてくれていた。

 そのおかげで、わたしたちは春泉ちゃんのおしっこをくまなく処理できた。


 春泉「あ、ありがとう、二人とも……」

 玲香「お礼を言われることなんて、何も」

 未咲「そうそう、わたしだって嫌ならこんなことしてないし」

 春泉「すごくよかった……ミサキがいなかったらハルミ、また恥ずかしいことに」


 自分のおしっこを飲まれることは、とくに恥ずかしいとかはなさそうね……。


 未咲「春泉ちゃんもすっきりしたことだし、今度こそ帰ろう!」

 玲香「未咲はあっちで、春泉はそっちね。またあした」

 春泉「うん! きもちよかったよ、ミサキ! じゃあね、アデュー!」

 二人「(春泉 ((ちゃん)) なのに英語じゃない……)」


 そんなこんなで、わたしたちはそれぞれ帰途についた。

 道の真ん中には、ふたりのおしっこが混ざりあってハートが描かれていた。

 まるでむかしのように、そのおしっこはあたたかかった。

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