#16 - 屋上クロスマインド - Rooffloor Crossmind -

 ある日の放課後。

 学校の屋上で、未咲はこししながらおしっこを我慢がまんしていた。

 それも、わたしがいる目の前で。


 玲香「どうしたのよ、またやぶからぼうに」

 未咲「えへへ……むかしのことを思い出したら、ちょっと頑張がんばりたくなって」

 玲香「つきあわされてるわたしの気持ちも考えなさいよ……はぁ……」

 未咲「きょうも寒いねー……おぉぅ、なんて言ったらよけいに尿意にょういが……」

 玲香「あんまり外にいると身体からだが冷えるから、気がんだら中に入るわよ」

 未咲「わかってるよー、ちょっとやってみたいだけだから」

 玲香「つくづく思うけど、あんたってちょっと変態のケがある気がする……」

 未咲「そうかな? これでもふつーのつもりだったんだけど……」

 玲香「自覚なしだったのね……」

 未咲「あのころね、キスし終わったあと、無性におしっこがしたくなって

    あわててトイレに行ったの。そしたらすっごく気持ちが良くて……」

 玲香「それでときどき、未咲はわたしを屋上に呼び出して……」

 未咲「うん……いつもごめんね、こんなことにつきあわせちゃって……」

 玲香「もう慣れたからいいけど、そんなにこれがしたいものなの?」

 未咲「なんていうか、くせになっちゃったんだよね……。

    こんなにもきもちいいことがあったなんて! みたいな?」

 玲香「そう、ぜんぜんわたしにはわからないけれど……」

 未咲「こうやってはずかしいところをくいって前に出してね、

    トイレ行きたいなーとか頭のなかで考えるのってけっこう楽しいんだよ?」

 玲香「ふーん……」

 未咲「関心なさそうだね、玲香れいかちゃん……。

    そうだ、ちょっと玲香ちゃんもわたしみたいに我慢してみようよ!」

 玲香「えぇ……わたしはべつにいいわよ……」 

 未咲「絶対楽しいからさ! ねっ、いっしょにやろう?」

 玲香「しかたないわね……やればいいんでしょ、やれば」

 未咲「ありがとー、玲香ちゃん! さすがは初キスのお相手!」

 玲香「ちょ、いまそれはなんかずかしいからやめて……」

 未咲「じゃ、まずはこれを飲んでもらって……きゃー、間接キスだね!」

 玲香「……きょうは特別なんだから」


 こうして玲香ちゃんは、わたしと一緒におしっこを我慢してくれることになった。

 いつもと変わらない寒い屋上には、しんしんと雪が降りはじめていた。


 ♦


 会話から少しったころ、未咲は早々に悲鳴をあげることになる。


 未咲「まずい……なんで、きょうに限ってこんなに寒いの……?」

 玲香「雪も降ってるし、やめたほうがよかったんじゃ……」

 未咲「ううん、やめない! 一度やるって決めたことだもん!

    それにもう、いまから急いでトイレに行っても間に合わないかも……」

 玲香「そんなにまってしまったのね……わたしはまだ大丈夫だいじょうぶだけど」

 未咲「そんなこと言ってたら、そのうち玲香ちゃんもやばくなるかもよ~?」

 玲香「これでも我慢には自信あるから。未咲と一緒にしないで」

 未咲「またまた~、この間の玲香ちゃんを知ってるわたしに通用するとでも?」

 玲香「あのことはっ……さっさと忘れてほしいんだけど!」

 未咲「うぷぷっ、かわいいお顔がまっかだねぇ、?」

 玲香「やっ、やめてよ! それに、あんたは人のこと言える立場なの?!」


 正直、この顔はずっと見ていてもきない。

 そんなくらいに、このときの玲香ちゃんはあわあわしていた。

 いじめてるわけじゃない。ただなんとなくからかってみたかっただけ。


 あれこれ言いあっていると、わたしの身体がぶるぶるっとふるえだした。


 未咲「(あっ、これほんとにまずい……限界も近いような……)」

 玲香「ん? どうしたの、未咲?」

 未咲「あっ、えっと……もうそろそろやばいかもなーって……」

 玲香「まだ出さないでよ、わたしだって頑張がんばってるんだから」

 未咲「じゃあ失敗するときは、思いっきりせーのでやっちゃおう!」

 玲香「未咲はわたしの限界まで待てそうなの?」

 未咲「そう長くはもたないかな……できるだけ早く限界になってほしい!」

 玲香「わかったわ、なるべく頑張ってみるから、未咲も頑張りなさい」

 未咲「うん! ファイトだよ、玲香ちゃんもね!」


 いったい何を頑張っているのか、この際どうでもよくなりそうだった。

 とにかく目的を果たすまでは、ふたりで協力しあいながらやっていこう。


 降ってくる雪の量が、だんだん増えてきているような気がする。

 それにしたがって、玲香ちゃんも徐々にわたしのような体勢になっていく。


 未咲「あぁ、おしっこしたい、おしっこしたいよぉ……」

 玲香「ちょっとくらい落ち着きなさいよ……わたしだって、もう……」

 未咲「だって、ほんっとーにしたくてしたくてたまらないもん……」

 玲香「気持ちは痛いほどわかるけど……それにしても寒いわね……」


 見上げてみると、冷たい色をした白色がさっきよりもくなっている。


 未咲「雪もどんどん降ってくるよね……うっすら積もってるし……」

 玲香「風邪かぜでもひいたら大変よ……ここで終わりにしたほうが……」

 未咲「何言ってるの、玲香ちゃん! ここまできてやめようだなんて!」

 玲香「とはいっても……まぁでも、未咲はどのみちどうしようもないわよね」

 未咲「どうしようもないからこそだよ! そういう玲香ちゃんだって!」

 玲香「そ、それはそうだけどっ……」

 未咲「だから、ほら、果てるときはいっしょ、でしょ……?」

 玲香「ちょっと未咲、顔が近いんだけど……」


 言うのと同時に、必死にこらえる未咲にみょうに熱っぽい印象を受けてしまう。

 これまでもあったことだけど、今回は寒さのせいか、いつもとは少しちがう。

 なんというか、とにかく本気だ。本気で果ててしまうつもりなのかもしれない。

 そういうことならば、わたしも本気で未咲にこたえないといけない。

 わたしは覚悟かくごを決めた。


 未咲「あのときね、じつはちょっとだけ間に合わなかったんだ。

    それがすっごく恥ずかしくて、でもなぜだかまんざらでもなくて」

 玲香「ねぇ未咲、そろそろ……」

 未咲「それからかな、わたしがいまみたいにヘンになっちゃったのは。

    たまにわざと失敗してみたり、ひとりえつっちゃったりして」

 玲香「あの、だから……」

 未咲「迷いなんてなかった。だって、わたしが好きでやりはじめたから。

    いつだって頭のなかには、なさけないわたしの姿が映ってるの」

 玲香「聞いてるの、未咲……?」

 未咲「だから玲香ちゃん、こんなわたしをどうか許して。

    このどうしようもない、いくつになってもだめなわたしを……」

 玲香「わかったから、早く……」

 未咲「そうだよね、ここまでほんとにつらかったよね……

    おつかれさま、玲香ちゃん。もうがまんしないでいいよ」

 玲香「未咲っ……」


 未咲のことばを合図に、わたしは下着に手をかけようとした。

 なのに。


 未咲「待って、玲香ちゃん! わたしの言いたいこと、ほんとにわかってる?」

 玲香「えっ……?」


 すかさず未咲が飛びついてきて、わたしの行動を阻止そしした。


 未咲「玲香ちゃんにはこれから、わたしの味わった感触かんしょくをたしかめてもらうの」

 玲香「それってつまり……」

 未咲「用意はいい?」

 玲香「……」


 薄々うすうすわかっていたけど、やっぱりそういうことだった。

 これから未咲はわたしに、とっても恥ずかしいことをさせようとしている。

 そして、その行為こういは当然のように未咲も体験することになる。

 湿しめっぽくてあたたかい、とっくのとうに忘れてしまったあの感覚を、ふたたび。


 玲香「当然だけど、未咲もするのよね?」

 未咲「もう、そんなこと聞かなくてもわかってるでしょ?」

 玲香「お手本として、まずは未咲がすること。いい?」

 未咲「はーい! じゃあ準備するから、ちょっと待ってて」


 準備というほどのこと、なんていうのはほとんど心の問題。

 そんなもの、身体はとっくに整っているというのに。


 未咲「よし、これでいつでも出せそうだね!」

 玲香「こんなところ、絶対に誰にも見られたくはないわね……」

 未咲「玲香ちゃんだったら、いくらでも見ていいからね?」

 玲香「とんだ特権ね……よろこんでいいのかさえわからないわ……」

 未咲「じゃ、いくよ?」

 玲香「わたしもそろそろ限界だから、できればちゃちゃっとお願いね」

 未咲「わかったっ……はうぅっ、出るっ……!」


 ちょろろっ。

 わずかな水音のあと、めに溜めた黄色い液体がせきを切ったように流れだす。


 未咲「はぁぁっ……きもちいいなぁ……」


 玲香ちゃんを前にして果てるわたし。自分でもどんな顔してるのかわからない。

 そしてスカートがれないよう、とにかく目いっぱいたくし上げているわたし。

 そこにいる人が玲香ちゃんじゃなかったら、ここまで大胆だいたんにはなれていない。

 玲香ちゃんだからこそ、こんなにもありのままでいられるんだ。


 未咲「……おわったよ」

 玲香「いま目の前でされると、つられてしちゃいそうになるじゃないっ……」

 未咲「つらそうだね、玲香ちゃん……大丈夫だいじょうぶ、すぐ楽にしてあげるからね……」

 玲香「なっ、何をするつもりなの、未咲……?」

 未咲「下着をしたままでもおしっこしやすいように、おなかをさすってあげるの」

 玲香「そんなことしなくていいからっ、自分でするからっ……」

 未咲「ほんとに~? なーんか信用できないな~……」

 玲香「ほんとにできるから……早くどいてっ……」

 未咲「うーん、いまの玲香ちゃんはこまったさんだなぁ。それじゃ、やってみて」

 玲香「言われなくてもやるわよ、このくらいっ……」


 そう言って、玲香ちゃんはみずから排尿はいにょうをうながす行動をとりだした。

 この寒さでこれだけえているのは、相当に苦しいと思う。

 先に果ててしまったわたしだって、正直どうなっちゃうのかと気が気でなかった。

 玲香ちゃんはおもらし慣れしていないので、さらにきついんじゃないかな。


 玲香「うぅっ、なかなか出ない……早く出しちゃいたいのにぃ……」

 未咲「がんばって! 玲香ちゃんならできる!」

 玲香「頑張ってるんだけど……しちゃいけないところだから出ない……」

 未咲「やっぱり、わたしが手伝てつだったほうがよかったんじゃ……」

 玲香「そういうわけにはいかない、わよっ……自分でやるって決めたし……」

 未咲「息とか吹きかけてあげようか? そしたらちょっとくらいは……」

 玲香「いいわよ、そんなの……なんか、変態みたいだし……」

 未咲「もうじゅうぶん、変態みたいなことしまくってるんだけどね……」


 何かにつけてサポートを拒否する、わたしの幼馴染おさななじみ


 未咲「(ほんとに、手を出さなくていいのかな……)」


 不安に思っていると、玲香ちゃんの表情に変化が起きた。


 未咲「あっ、なんかすっごく恥ずかしそうな顔してる。そろそろかな?」

 玲香「まじまじと見ないでっ……いま、ちょっとやっちゃったのっ……」

 未咲「ほんとだ、よく見たらうっすらしみになってる……」

 玲香「だからぁ……」

 未咲「その調子だよ~、怖がらずにぜーんぶ外にぶちまけちゃおうねっ」

 玲香「ぶちまける、ってぇ……」


 だんだんしりすぼみになっていく玲香ちゃんを見て、わたしはたまらなくなった。


 未咲「(目を光らせながら)さぁ、こい!」

 玲香「待って、未咲っ……ふあぁっ……」


 しゅうぅぅっ。

 たよりない音とともに、わたしが流したのと同じ色の液体がどっとこぼれ出た。


 玲香「あぁ……やっちゃった……」

 未咲「ほら玲香ちゃん、スカートまくらないと!」

 玲香「えぇっ……まくらなきゃ、だめ?」

 未咲「寒いかもしれないけど、れたらよけい寒くなっちゃうよ?」

 玲香「わ、わかったわ」


 まさか、言われたとおりにしてくれるとは思わなかった。

 玲香ちゃんの素直すなおさのおかげで、よごれたわたしは興奮するはめになってしまう。


 未咲「おほほーっ! 玲香ちゃんのパンツ、なんて洗練されたデザインなの!」

 玲香「見るな、ばかー! あーぁ、もうさいあく……」

 未咲「大丈夫だよ、玲香ちゃん! やっぱり玲香ちゃんは玲香ちゃんだったね!」

 玲香「見られたのが未咲でまだよかったけど、これがほかの人だったら……」

 未咲「さすがにこんなことは、わたしだって恥ずかしいような……。

    でもありがとう、今夜はいい夢が見れそうな気がしてきたよ!」

 玲香「そんなつもりじゃなかったのにー!」


 降り積もった雪をかすほどの愛が、学校の屋上ではぐくまれていった。

 ちょっぴり偏狭へんきょうだとはわかっていても、こればかりはやめられそうにない。

 これからもよろしくね、玲香ちゃん。

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