#12 - 甘い匂いに誘われて…… - Sweet Strawberry Bread - 2

 と、終業のチャイムが鳴った。


 未咲「(えっ、もう英語の授業おわっちゃったの?)」


 終わってしまったなら仕方がない。落ち着いたら教室にもどろう。

 そう思っていると、さっきも聞いたような声がこちらへ近づいてきた。


 ♦


 ロコ「未咲みさきちゃん大丈夫だいじょうぶかな~……かなり切羽詰せっぱつまってそうだったよね……」

 うみ「まー大丈夫だろ。ほがらかなあいつのことだし、大事おおごとにはならねーよ」

 ロコ「そういえばうみちゃん、わたしのいちごパンどこかで見なかった?

    朝お店で買ってきて、どこでくしたのかなって探してるんだけど……」

 うみ「? 知らないな、もう誰かに食べられてんじゃない?」

 ロコ「待ってうみちゃん……くんくん……なんかこのあたりからいいにおいが」

 うみ「このあたり、って?」

 ロコ「ほら、ここ……あれ、なんかちょっと水がぽたぽた落ちてるような……」

 うみ「あー、ほんとだ。なんだろ、これ……雨漏あまもり、じゃないよな」

 ロコ「この匂い、どこかでいだことあるんだよね~。なんだっけ~……?」

 うみ「嗅いだことあるんだったら、ちょっと考えれば思い出せるかもな」

 ロコ「そうだね~……ん~、なんだろうな~……」


 ♦


 トイレにいても聞こえるその声に、わたしは内心どきどきしっぱなしだった。


 未咲「どうしよう……わたしがトイレでおしっこしなかったことがばれる……」


 おまけにそれを飲んだことも……って、これはさすがにばれないか。

 でも、そのぽたぽた落ちてるものの正体が割れてしまうのは時間の問題。


 未咲「とりあえず、このいちごパンの持ち主はロコちゃんだった、と」


 それはわかったけど、つい食べてしまったわたしは何を考えているんだ。

 やってしまったことを、彼女にびなきゃいけなくなってしまった。


 未咲「わ―――っ! わたしのおしっこの匂い、めっちゃ嗅がれてるよぉ……」


 そんな彼女を想像してしまって、とても自我じがなんてたもてなくなってしまう。

 おまけにアソコまでむずむずしてきて、わけがわからなくなっていく。


 未咲「(もういじくり回したい……あたまがおかしくなっちゃうまで……)」


 外の寒さとは対照的たいしょうてきに、わたしの体のなかの温度がどんどん上昇していく。


 未咲「ふぅんっ……はぁ、はぁ……」


 これはやばい。呼吸まで、自分ではもはやどうにもならないほど乱れてきた。

 さっきまでの自分を回想して、それらがすべて興奮となって押し寄せてくる。


 未咲「いやぁっ……ろこひゃぁん……おねがいだからかがないでぇ……」


 まるで目の前で、自分のを直接嗅がれているような錯覚をおぼえてしまう。

 声は遠ざかっていく気がするのに、なぜか存在感は自分のなかで増していた。


 未咲「またおひっこ……でひゃうからぁ……」


 ♦


 ロコ「あ~っ、わかったかも~」

 うみ「おっ、まじで? んで、何だったんだよ?」

 ロコ「これ、わたしが落としたいちごパンのかおりだよ~!」

 うみ「よくわかったなぁ……嗅覚きゅうかくが犬なみだわ……あたし全っ然わからん」

 ロコ「さすがにわたしの好物だから、すぐわかっちゃったよ~」

 うみ「判明するまで、けっこう時間かかってたけどな……」

 ロコ「じゃぁうみちゃん、わたしトイレに……はぅっ?!」


 さっきまで感じなかった異変が、いきなり下腹部に起こった。


 うみ「どうした?」

 ロコ「ど、どうしよう……おしっこ、もう出ちゃう……」

 うみ「はっ?! なんでまたそんな急に……」

 ロコ「だって~! 外がこんなに冷えてるなんて気づかなかったの~!」

 うみ「もう間に合わないか?! ほんとに限界か?!」

 ロコ「うん……ごめん、うみちゃん、わたし、もう……」

 うみ「そうか……でもせめて、ぱんつをぐとかくらいは……?」

 ロコ「やだよ~! こんなに寒いのに素肌さらすなんて~!」

 うみ「……すでにさらしてないか? 下半身とかさ……スカートだし」

 ロコ「それとこれとは……どっちみち恥ずかしいから、ぱんつくらい……」

 うみ「わたしが脱がしてやるから、ほら誰もいないし、いいだろ?」

 ロコ「マシュー先生は~? もしかしたら近くにいるかも……」

 うみ「つまり、どうするつもりだ?」

 ロコ「もし先生がいたら、見られちゃうかもしれないし……

    あとね、おしっこの音も出したくないから、あえてぱんつは脱がない」

 うみ「わかった……ロコがそうするんだったら、あたしは何もしない」

 ロコ「ありがとう、うみちゃん……じゃぁ、するね?」

 うみ「ああ……どうぞ」


 顔を赤くしながら、ロコが女の子座りをして、制服のスカートをたくし上げた。

 そしておもむろに、なにかが溜まっている下腹部に力を入れてみる。


 ロコ「……ぁ」


 わずかにれる声とともに、下半身に空気とは真逆のぬくもりが排出はいしゅつされた。

 弛緩しかんしていくその体は、排泄はいせつの快感で小刻こきざみにふるえている。

 そして排出されたその液体は、誰かが残したしずくと混ざり合っていく。


 ロコ「きもちいい……うみちゃん、わたし、しあわせ……」

 うみ「お、おう、それはよかったな……」


 正直、気まずい。友達が横でおもらししている姿を見てしまっているから。

 ただ彼女の顔を見ていると、ほんとうに心からしあわせそうだった。


 うみ「あの、さ……あたしもちょっとトイレ行きたいんだけど……」

 ロコ「ん? いいよ、いっといれ~……」


 寒さからか、自然とそんなくだらないしゃれがかんできてしまった。

 うみちゃんを見届けて、わたしはひとり掃除そうじ道具どうぐを取りに行った。


 ♦


 うみ「ふぃー……さっきはどうなるかと思った……」


 ひとりごちながら、女子トイレに入っていった。

 と、閉まっている個室から、淫靡いんびにも聞こえる声が響きわたった。


 未咲「もうだめっ……ほんっとにだめ……おしっこ、したい……」


 ……すればいいじゃん。ここトイレなんだし。

 なんて思いながら聞いていると、またさらにひどい声がした。


 未咲「ひゃんっ! そこさわらないで、おねがい……」


 ひとつの個室に、もうひとりだれかいるのかよ。

 そう思わずにはいられなかった。ここ学校だぞ。そんなことしたらだめだろ。


 うみ「ま、いいか。気にしてたらロコみたくだだらしになっちゃいそうだし」


 そこまでまってはいなかったけど、念には念を、ということで。


 未咲「……そこにだれかいるの?」

 うみ「!」


 気づかれたか。まあ、気づかれたからって何かあるわけじゃないけど。

 ただ、なんとなくいやな予感がした。


 未咲「ちょうどよかった、わたしのところにおいで。いまこまってるんだ」


 何を困っているというのか。まったく見当がつかなかった。


 未咲「ほら、早く!」

 うみ「うおっ?!」


 いきおいに流されて、わたしは彼女の待つ個室にまれていった。


 未咲「いやー、ちょうどいいところに……ってうみちゃん?!」

 うみ「はい、どうも……なんか、困ってるって?」

 未咲「単刀直入たんとうちょくにゅうにいうとですね……わたしの性処理をおねがいしたいなって」

 うみ「あーそういうことね……って、うえぇぇぇっ?!」

 未咲「このままひとりでイっちゃうのもな、って思ってたところだったんだよ」

 うみ「っていっても、あたしもませたいことが……」

 未咲「ごめん、それあとにできない? わたし、もううずうずが止まんなくて」

 うみ「しかたないなぁ……すぐ終わらせるからな? 覚悟かくごしろよ?」

 未咲「うん! じゃあ、おねがいします!」


 ♦


 うみ「おいおいしぶといな、未咲……いったいいつイってくれんだよ……」

 未咲「大丈夫、うみちゃんの愛撫あいぶ、ちゃーんときもちいいから続けて♡」


 められはしたものの、なかなか絶頂にたっしてくれないあたしのクラスメート。

 それなのに、未咲はトイレだけはちゃっかり済ませてしまった。


 うみ「いったろ、あたしも済ませたいって……なぁ、聞いてる?」

 未咲「じゃあお礼に、わたしもうみちゃんのこと、きもちよくしてあげる♡」

 うみ「えぇ~……あたしはいいって……」

 未咲「えんりょしなくていいから、ほら、もっと前にきて?」


 なされるがままに、あたしは未咲にいわれるとおりに身を寄せた。


 未咲「じゃぁ……するね?」

 うみ「学校でこういうことするのはどうかと思うけど……ま、いっか」

 未咲「もしいやだったら言ってね? やりかたとか、ちゃんと考えるから」

 うみ「やめる、とかは言わないのな……」


 何もかも、未咲のペースにゆだねられる形になりそうだ。


 ♦


 うみ「未咲、ストップ!」

 未咲「ん? どしたの、うみちゃん?」

 うみ「トイレ……いや、ここは確かにトイレなんだけど、そうじゃなくて……」

 未咲「おしっこ? もうがまんできない?」

 うみ「いじくられてるうちに、なんかもよおしちゃったみたいで……」

 未咲「……ふふん、やめないよー♪」

 うみ「なんで?! いやだったら考えてくれるんじゃなかったのかよ!」

 未咲「だって、こんなにきもちよさそうにしてくれてるのに……ね?」

 うみ「何その、路線変更ろせんへんこうしちゃいます、的な顔?!」

 未咲「わたしにつかまったのが最後、うみちゃんはこうなる運命だったのさ!」

 うみ「やめろ未咲、ストップ、ストーップ!」


 どうやらうみちゃん、ほんとうに限界だったみたいで、

 わたしの愛撫によって、このあとめちゃくちゃおもらしした。


 うみ「はぁ、はぁ……あーぁ、もう、下着ダメんなった……」

 未咲「でもきもちよかったでしょ? いぇーいっ」

 うみ「いぇーい、じゃねーよ……こっちははじかいたんだぞ!」

 未咲「まぁまぁいいじゃないですか、これもいずれいい思い出になるって」

 うみ「思い出づくりのためだったのかよ?!」

 未咲「そういえばさっき、廊下ろうかからふたりの会話が聞こえてきたけど」

 うみ「あぁ確かに、あたしはさっきロコと話してたけど、それがどうかした?」

 未咲「いちごパン、じつはわたしがおいしくいただいちゃいました……てへ☆」

 うみ「てへ☆ じゃねーーーーっ! ロコにあやまれーーーーーーっ!」


 そしてチャイムが鳴り、わたしたちは教室に戻ったのだった。

 あと、わたしがトイレでおしっこしなかったことは、さいわいばれなかった。

 そう思っていた。


            (甘い匂いに誘われて…… -Sweet Strawberry Bread-・続)

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