#7 - 教室までの道 - road to our classroom - 4

 玲香「そういえば、未咲はいまどうしているのかしら……」


 それこそ、ヘンなことしてないといいけど……。


 ♦


 時間はさかのぼって、ほうほうのていでトイレに向かう未咲みさき


 未咲「もうげんかいだよ~……はやく、はやく~……」


 おなかの中が、とっくに破裂はれつしてもおかしくないほどになってきた。

 その感覚は、もう自分でもよくわからなくなっていく。冬の世界だし、仕方ない。


 未咲「まあ、ここでまたちょっと出せば楽になりそうではあるけど……」


 玲香れいかちゃんにひっかけてしまったことを、ここで今さらながらもうわけなく思う。


 未咲「わたし、犬じゃないのにな……」


 ただの友人だったらここで絶交、だったかもしれない。

 心やさしい玲香ちゃんだったから、そんなことにはならずにんだけど。


 未咲「あっ、見えてきた、見えてきた」


 女子トイレの入口。いまのわたしにとっては、まさしく楽園らくえんのそれにも見える。


 未咲「はぁ~っ……やっと、落ち着けそうかも~……」


 入野未咲しおのみさき、ただいまから発射準備をととのえるであります!


 未咲「うわ、はっず……なんでこんなこと考えてるんだろ、わたし……」


 がまんの限界は、どう考えてもそこまで来ていた。


 未咲「あ~、もう……めっちゃ寒いんだけどぉ……とくに足もととかぁ……」


 氷漬こおりづけにでもされているかのような空気が、わたしをどこまでも苦しめる。


 未咲「うん……もう、ここでちょっと出しちゃってもいいんじゃないかな……」


 玲香ちゃんにはわるいけど、またお世話になっちゃお……。


 未咲「って、そんなのダメダメ! なんとしてでも自分でたどりつかないと!」


 どうしよう……わたし、さっきからずっとヘンなこと考えてしまってるよ……!

 ただでさえ玲香ちゃんも冷えてるのに、もしわたしが失敗しちゃったら……。


 未咲「……そういえば玲香ちゃん、身体とか冷えてないかな?」


 なんか自分の心配よりも、どっちかというとそっちのほうが気になるかも……。


 ♦


 玲香「くしゅん!」


 あれっ……いま、ちょっと寒気がしたような……。

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