#5 - 教室までの道 - road to our classroom - 2

 ゆっくり時間をかけて、わたしたちはようやく校舎こうしゃ辿たどいた。


 未咲「れいかひゃ~ん……れいかひゃんはわらひの@#$%&?*+……」

 玲香「あーあーもう……どうするのよ、これ……」


 完全に安心しきった顔で、幼馴染おさななじみはがまんを重ねた液体を垂れ流し続ける。

 ぐるぐる目を回しながら、犬みたいなうれしょんが止まる気配けはいはついになかった。

 これってもうすでにダメ人間でしょ……だれかに見られたらどうなってたか……。


 玲香「そういえば、校舎にまだだれも来ていない気がする……」


 無理もない。冬の時代が始まって間もないし、勝手がわかっていないんだろう。

 誰かが来るのを待っていてもしかたがないし、校舎に入ってみよう。


 玲香「とりあえず未咲、ここで降りてちょうだい」

 未咲「え~っ、もうちょっとだけっこしてほしかったのに~!」

 玲香「あんた、ほんとに何歳なんさいなのよ、まったく……」

 未咲「ねえ玲香れいかちゃ~ん……これ、どうしたらいいの~?」


 どうやら正気しょうきもどったっぽいけど、ちょっとおそかったかもしれない。

 わたしのうでが、未咲の出した液体でびちゃびちゃにれてしまったから。

 もちろん、あなたの服もね。


 玲香「とにかく、いまからまずろすから、ちゃんと立ちなさいよ」


 言う通りに、わたしは下半身が液体にまみれがちの未咲を冷たいゆかに降ろした。


 未咲「ありがと~。んじゃ残りのやつ、全部トイレで出してくるね~……」

 玲香「だから、言わなくていいんだけど……」


 そのとき、廊下ろうかに人影が見えた。


 玲香「ひっ?!」

 未咲「えっ、何なに、玲香ちゃん? なんかあったの?」

 玲香「ほ、ほ、ほら、見て……あそこ……」


 こう見えてわたし玲香は、怪奇かいきチックなことが苦手だったりする。

 正体不明のその人影は、容赦ようしゃなくじりじりとわたしたちのほうに近づいてきた。


 未咲「あっでもわたし、もう限界だから、あとは玲香ちゃん一人でよろしくー!」

 玲香「えっ、ちょっと……!」


 あわててげるように、未咲は無慈悲むじひにも一目散にトイレにんだ。

 涙目なみだめになりそうな体験を、久しぶりにしてしまいそうな予感がする……。

 未咲……あなた、帰ってきたら思いっきりきしめるから覚悟かくごしなさいよ……。


 玲香「はぁ……ちょっとこわいけど、ここの生徒かもしれないし、近づいてみよう」


 もしも幽霊ゆうれいだったら、どうしよう……。

 そんな非科学的なことを、簡単に信じる身ではないとは知りつつも……。

 と、わたしはここで考えかたを180度ほど変えてみた。

 もしかしたら、生徒会の人なのかもしれない、と。

 わたしも生徒会に所属しているし、もしそうだとしたら絶対に安堵あんどできる。

 少し勇気がいるけど、その人影に声をけてみることにした。


 玲香「こ、こんにちは~……」

 ??「ハウディー!」

 玲香「……?」


 呼びかけて聞こえてきた返事は、底抜そこぬけに明るい声をしていた。

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