#3 - あしたはどっち?

 未咲「あっ! 玲香れいかちゃんの家の前に、ご本人さん発見!」


 玲香ちゃんはもう、自宅の前にたたずんで携帯電話けいたいでんわをいじって遊んでいた。


 玲香「……ようやく来たのね、未咲みさき


 わたしよりひくめの声で、そしてわたしをちらっと見ながら玲香ちゃんは言った。

 べつにおこってるわけじゃないだろうけど、その視線はどことなく冷たい。

 わたしはすでに、玲香ちゃんはそういう子だってわかってるからいいんだけどね。

 ん? ほんとうにいいのかな……もしほんとうにおこってたら、どうしよう……。


 玲香「大丈夫だいじょうぶおこってるわけじゃないから安心して」


 あっ……わたしの考えてること、玲香ちゃんに筒抜つつぬけだったみたい……。

 さっきほんの一瞬いっしゅんだけ、まぬけみたいな顔してたからかな……。


 未咲「それにしても、きょうも寒いね……」

 玲香「そう? わたしはこれくらい寒くても平気なんだけど」

 未咲「玲香ちゃんはいいな~、寒さにも全然動じてなさそうで……」

 玲香「いいえ、それはちがうわ。これだけ寒いのに動じないほうがどうかしてる」

 未咲「確かにそれはいえてるかも~」

 玲香「ほら、早く行くわよ。こんなところで長話してると遅刻ちこくするから」

 未咲「そうだね……あれ? これ、どっちに曲がったらよかったんだっけ?」

 玲香「あなたっていっつもそうね、わたしがいないとどうなることやら……」

 未咲「えへへごめん……玲香ちゃんにリードしてもらわないとダメかも、わたし」

 玲香「……未咲の犬っぽい部分、わたしはきらいじゃないかな(ぼそっ)」

 未咲「なに? 玲香ちゃん、なんか言った?」

 玲香「なんでもないわ。さっさと学校に行きましょう」

 未咲「あーん、ちょっと待ってよ~! れ~い~か~ちゃ~~~ん!」


 こうしてわたしたちは、冬っぽい世界で新しい生活をはじめることになった。

 というか、もうすでにはじまっていた、感じもする。

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