第九章 杜の国
第215話 アストラッドへ
翌日、ローカス道場を出発する朝。
「本当に今日出発するんですね」
ミロはロックの目を見て問う。そこにどんな意味が込められているのかをロックは全く気が付いていない。ミロは直接言うつもりもないし、傍で気が付いているルークたちもロックに言うつもりが無かった。
「ああ、本当に世話になった。ミロがここに留まってくれてクスイーたちを助けてくれると助かる。頼んだぞ」
「ええ、頼まれてあげます。でも約束してください。いつか必ずここに戻ってくると」
「ああ、約束する。それほど遠くない先に必ず戻ってくる。その時にはマゼランの三騎竜もマシュ=クレイオンも全部倒す」
相変わらずロックには剣の事しか頭にないがミロもそんなことは判っているから何も言わなかった。
「負けた儘ではいれませんものね」
ロックとミロは二人に似合いの別れとなった。
「ミロ、トリスティアもクスイーとマコトのこと、頼みました」
ルークは特にトリスティアをローカス道場に入れられたことで安心していた。
「で、アクシズはどうした?」
「アクシズさんはもう出られました。世話になったと一言残して。こちらがお世話になったのですが」
アクシズはロックとルークには別れを告げずに出たようだ。
「なんだ、水臭い奴だな」
「アクシズにはアクシズの都合があるんじゃないかな。じゃ、行こうか」
「そうだな。では行こうか」
ロックとルークはとりあえず東へ向かうことにした。
「で、どっちかな?」
アストラッドに向う、ということは決めてあったが、何処を通って、ということは決めていなかったのだ。
マゼランからアストラッドに入るには一旦カーでニア領の東端の港街ミロールに出て船でアストラッド領の港街ツーロンに入るコースとカウル山脈に入ってアストラッド領ウラノに入るコースがある。
ツーロン経由だと次の大きな街が同じ港街である州都レシフェに海路や陸路で向える。陸路だと広大なオルレアン森林地帯の南端を通ることになる。
、ウラノ経由だとずっと山地を抜けてケベックに出てロパース河沿いにオルレアン森林地帯の東端を南下してレシフェに向かうことになる。
道の険しさでは圧倒的にカウル山脈越えになる。
「さて、どっちがいい?」
ロックの中では既に決まっているようだ。
「ロックの好きな方でいいよ」
「じゃあ決まりだな、北東に向かってカウル山脈越だ」
(山を越えるのか)
「ジェイ、なんだ、嫌なのか?」
(寒いのは苦手、と言う程度じゃがな)
「それでロス界隈に居たのか」
(それは否定せんが、ステファニー様の意向でもあったしな)
「なんだ、たまには帰っているのか?」
(帰るのは流石に無理じゃな。連絡は取っておるよ、お前たちの武勇伝は報告済じゃて)
「まあ、元々その約束だからいいよ」
「よし、そうと決まれば山越えの装備を整えないとね」
ルークはロックがカウル山脈越を選んでくれてほっとしていた。ミロールに向かうには途中ディアック山の麓を通ることになる。それは避けたかったからだ。ディアック山には影のガルドが居る、と言われている。数字持ち魔道士との軋轢は避けたかったのだ。
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