第214話 剣士祭Ⅴ⑩

「ソニー=アレス、今回は本当に助かった、ありがとう」


 ロックとルークは礼を言うためにソニーの元を訪れていた。アクシズは既にローカス道場を後にしていた。


「いや、アクシズがお役に立てたのならよかったよ」


「でも何で俺たちに協力してくれたんだ?」


 ロックが素朴な疑問をぶつける。


「ああ、最初は僕自身が、と思ったんだけど流石にそれは無理があるし、それなら丁度アクシズが居たから、と思っただけだよ。僕と彼の用事はまだ少し時間が掛かりそうだったからね」


「君とアクシズの用事って?」


「それはちょっと」


「だよね。いいよ、ありがとう、本当に助かった」


「それにしてもいきなり準優勝は凄いね」


 ソニーは色々と誤魔化した。誤魔かせてはいなかったが二人とも突っ込まなかった。


「いや、まあ、それは実力?」


「なんで僕に聞くんだよ」


「確かに君たちの実力だと思うよ。特にロック、君はいずれシャロン公国一の剣士になるんじゃないか」


 ロックは褒められて満更でもなさそうだ。


「勿論それを目指して修行を続けるつもりだ」


「そうだよね。で、ずっとマゼランで修業を続けるんだ」


「いや、マゼランはもう出ようと思っている。もっとシャロン中を回って修行をしたいしな。それにルークのためにオーガを探さないと」


「そうなんだ。じゃあもう行先は決まっているんだね」


 ロックたちはマゼランを出ることは決めてあったが、何処に向かうのかは決めていなかった。


「いや、まだ」


「えっ、明日にでもマゼランを出るってさっき言ってなかった?」


「ああ、確かに明日出発の予定だけど行先はまだ決めてない」


 本当に二人とも行く先を決めていなかった。決めかねていた、というのが正解だった。南西から東へ向かって来たのだ、次はそのまま東に向かうか北へ向かうかの二択の筈だった。


 東に向かえばソニーの故郷であるアストラッド州、北へ向かえば聖都セイクリッドのあるジャスメリア地方になる。ロックは朧気ながら聖都に行くのはまだ時期尚早な気がしていた。


「でも、東か」


「そうだね、東がいいかも知れない」


「東だとアストラッドじゃないか。君たちがアストラッドに行くのか」


「東に向かえばそうなるね」


「アストラッドに入って何か困ったことがあったら僕の名前を使ってくれればいいよ。向こうにはアークも居ることだし頼ってやってくれれば」


「ありがとう、もし困ったことが出来たら頼らせてもらうことにするよ」


「アークか、うん、あいつは良い剣士だ。会うのが楽しみだな」


 ロックはやはり剣のことしか興味が無かった。

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