第182話 剣士祭Ⅱ⑧

「失礼なことを言い過ぎたようだ、許して欲しい」


 ローデから謝罪があった。ただ本心からではなくロックのちちバーノン=レパードとの関係でフォローしておこうという魂胆のようだ。


「本選も頑張ってくれ」


 そう言うとローデはそそくさと奥に引っ込んだ。ローカス道場が優勝でもすれば予選で負けた言い訳にもなるが、ロックたちが強いとはいえ優勝するとは全く思っていない。4位からの転落はローデにとっては予定外だった。


「なんか怒ってたな」


「それはそうだろう。当然本戦に出場するつもりでいたんだからね」


「それは勝手な思い込みじゃないか」


「うちが出場していなかったら本選に出られたんじゃないかな。本当に強かったし、でも運が悪かったね」


 自分たちが予選で負けるとはロックもルークも全く思っていなかった。


「本選まで少しあるから戻ったら修行だな」


 アクシズの言葉にマコトとクスイーは身震いするのだった。


 道場に戻るとミロが待っていた。


「本当に勝っちゃったんだね。強い強いとは思っていたけど。このまま優勝するの?」


「そんなに簡単にはいかないよ。三騎竜も一人出て来ているし他にも強い剣士はいるからね。でもとりあえずはロックに強い剣士と試合ってもらいたいとは思うよ」


 ルークはロックが満足すれば試合の結果はどうでもいいと思っていた。勿論自身の勝ち負けに興味はなかった。


「二人は直ぐに修行だぞ」


 アクシズは二人を連れて道場に向かった。


「ルーク、実はちょっと変な事かあったんだけど」


 ミロが少し声を潜めて言う。


「何?どうかしたの?」


「うん、なんだかこの道場が見張られているみたいなんだ」


「見張られている?」


「視線を感じるんだよね、ここ数日なんだけど」


「僕たちは結構狙われているからね。ルーリに護衛を頼んでみるよ」


「いいえ、それがちょっと違うのよ。敵意を持って、とか何かを探るような気配ではないの」


「でも見張られていると?」


「そう。気配だけで姿は見てないんだけど」


「わかった。ジェイに頼んでみよう」


 ルークはジェイに道場の周りに誰か見張っている人が居ないか気を配ってもらうよう頼んだ。


(そういうときだけ思い出すのじゃな、まあいい、暇は暇だ、任せておけ)


 次の日はアクシズが二人の修行に明け暮れている。本選ではどちらかが1勝して欲しいと思っているからだ。


 アクシズも自分が負けるとは思ってはいないが2連敗の次に出て行くのは重荷になる。1勝でもしてくれていると楽に望める。最悪1勝2敗でルークに回す。後はルークの責任だ。


 マコトもクスイーも不満も言わずにアクシズとの修行を黙々と熟している。二人ともやはり負けたことが悔しいのだ。レベルが一つ上がるような過酷な練習を続けているのだ。

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