第175話 剣士祭Ⅱ
「よし。今日も俺の出番はないぞ」
ロックはなんだか嬉しいのか哀しいのか。勝ち続けると出番はないか誰か二人が負けると出番が回ってくる。
「出たいのか、出たくないのか、どっちなんだよ」
「ルーク、そう言うが順番を変えない限り誰かが負けないと俺たちの出番はないんだぞ、それを楽しみに待つって言うのはおかしいだろ」
ロックは珍しく正論を言った。自分が対象だとは思っているので順番を変えて欲しい、とは言い出さない。ただもしルトア道場と当たったとしたらクリフ=アキューズと試合えるよう順番も変えかねない。
そこへゲイル道場の道場主グラディウスがやって来た。
「ロック君たち、勝ち残ったんだね、おめでとう。うちも今年は本選に出たいと思っておる。手は抜けないが、よろしく頼むよ」
グラディウスはローカス道場を潰す気満々の様子だ。ロックは何一つ気にしていないようだが。
「ゲイルさん、うちも胸を借りるつもりで全力で行かせていただきます。宜しくお願いします」
ロックは目上にはちゃんと無礼の無い対応もできる。まあ、心の中ではどう思って居るかは謎だが。
ゲイル道場は中堅でグランデルが出てくるようだが先日ロックたちが道場を訪れた時に見知った顔は他には居なさそうだった。
「では二次予選二回戦ゲイル道場対ローカス道場の試合を始める」
試合開始の時間だ。
「先鋒ゲイル道場のノクス=ビスク対ローカス道場マコト=シンドウ、始め」
ノクスは少し小さなマコトと変わらない退場なのだが慎重は30cmほど高い。その分リーチも長くマコトはなかなかノクスに打ち込めないでいた。
「なんだか俺の相手は背の高い奴ばかりじゃないか?」
マコトが文句を言う。だが先鋒を変えていないので相手の都合でただの偶然だ。マコトもそんなことは判っているが背の低いマコトの相手が高身長ばかりだと言いたくもなるのだろう。
「それに基礎もちゃんとしてて、普通に強いぞ」
打ち込み、打ち込まれながらマコトが文句を言い続けている。文句を言う余裕はあるのだ。
「そろそろ決めたらどうだ?」
アクシズが声を掛ける。マコトはいつでも勝てるのだが実戦で練習をしていた。
「あんたたちみたいな化け物とやってもあまり練習にならないんだよ」
「なんだ、ロックとルークはともかく俺も化け物扱いか」
「アクシズ、あんたも十分化け物だよ。そしてクスイーもな。俺は化け物に囲まれて修行しているんだ」
マコトは話をしている間もずっと続けてノクスの剣を受け続けている。相手からすると失礼な話だが、気を抜くとマコトも打ち込んでくるので気が抜けない。
「でももういいか」
マコトは相手に合わせていたスピードのギアを突然上げた。
「そこまで、マコト=シンドウの勝ち」
マコトは相手が強かったお陰でいい練習が出来た、と喜んでいた。
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