第8章 剣士祭

第165話 剣士祭

「さあさあマゼランに剣士祭の季節がやって来たよ~」


 威勢のいい声が飛び交う中、マゼランは剣士祭の開幕を迎えていた。剣士祭は約1か月に渡って行われる剣士たちの年に一回のお祭りだ。


 マゼランには二百近い数の公認、非公認の道場があり聖都騎士団所属の道場だけでも二十はある。六つの州所属の騎士団や二つの公王領所属の騎士団の数も多い。


 ただ約半数は個人経営の私塾だった。それだけに剣士祭での成績が私塾への入者数に直結するので切実な問題だった。


 昨年の剣士祭の華、道場対抗戦では上位八位までに入ったのは聖都騎士団所属道場が四、州所属が三、私塾が一だった。


 聖都騎士団所属では昨年クレイオン道場が優勝している。他にはメスト道場が準優勝、ダモン道場が四位、カンタロア道場が五位だった。


 州所属ではグロシア州所属ランドルフ道場が三位、ガリア州所属のルトア道場が六位、ジャスメリア公王領所属のソノタ道場が八位だった。


 私塾で唯一八位までの本選に出場できたのは最終的には七位に入ったイプロス道場だった。数年前にはローカス道場も本選には出場できなかったが十位に入っている。


「いよいよ剣士祭だな」


「それはいいけど申込みはちゃんとしてあるんだろ?」


「それは大丈夫。僕とクスイーで申し込んでおいたから」


 剣士祭には事前の申込みが必須だった。道場対抗戦は五人一組で選手が入れ替わっても大丈夫だか申し込みをしていないと出られない。


 一応ほとんどの道場が出場するので本選に出るまでに一次予選と二次予選がある。一次は三道場で総当たりを行い一位のみが二次予選に進める。二次予選からは八道場毎に勝ち残る。


 一次予選の抽選が始まった。代表してアクシズが抽選くじを引く。


「一次予選7組だとよ」


 一次予選の7組では1番最初にくじを引いたので他の二つの道場はまだ決まっていない。


「どこと当たってもいいけど、強い所とは出来るだけ遅く当たりたいな」


 ルークは現実的だ。


「どこでもいいさ。強い奴とは全部やりたいんだから」


 ロックは本気でそう思っている。道場対抗戦は予選を含めて8試合しかできない。ロックは全然物足りなかった。


「7組の一つか決まったよ、プレトリア州所属のル=ラオ道場というところらしい」


「プレトリアか。剣より魔道ってお国柄なんだろ?あまり期待できないな」


「あ、最後の一つも」


「おい、ヴォルデス道場って」


 もう一つの道場はヴォルデス道場だった。ヴォルデス道場はロックたちの活躍でほぼ壊滅状態だったはずだ。


「ちょっと聞いてきたら、どうもヴォルデス道場は実際に暗殺に関わった人は全員捕まったけど関係していない残りの人たちで再興している最中らしいよ」


「それじゃあ、やっぱり強さは期待できないよな。なんだか残念な結果だ」


 ロックからするとそうかも知れないが、強い奴らは本戦まで行けば沢山いるだろう。


「ちゃんと勝ち残ったら嫌でも強い奴と戦うことになるんだから、少しは我慢して確実に勝つことだね」


「勝つさ。三騎竜に当たるまでは負けられない」


「僕もランドルフ道場と当たるまでは負けられません」


 珍しくクスイーが興奮気味に言う。クスイーにすればランドルフ道場以外はどうでも良かったのだ。


「とりあえず明後日から始まる剣士祭、存分に楽しむとしようか」


 ロックは楽しくて仕方がなさそうだった。

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