第166話 剣士祭②
10月1日、剣士祭の道場対抗戦一次予選7組の第一試合が始まる。
剣士祭の各試合は本選は公営試合場で行われるが予選は八か所の聖都騎士団所属道場で行われる。二十ある聖都騎士団所属道場でこの八つは固定されていてとても名誉な事だと言われている。
八か所の会場となる道場は当然勝ち残って本戦に出場する八道場に入ることを目指しているが昨年は半分の四つしか残れなかった。それだけ各州の騎士団所属道場や私塾、自由道場が強くなってきている証拠だった。
ローカス道場一次予選第7組は昨年3位決定戦でランドルフ道場に敗れて4位に入った聖都騎士団所属のダモン道場だった。道場の大きさでもダモン道場はマゼランで5指に入る大きさだった。
第一試合が始まる。プレトリア州騎士団所属のル=ラオ道場と私塾ヴォルデス道場だ。
ヴォルデス道場は幹部が殆ど頼まれて人を襲ったり殺したりする組織に属していたのでガーデニア州騎士団に捕まってしまったが、無関係の者たちの懇願が通って経営も前道場主とは関係がない別の者が行うことを条件に存続を許された。いずれは何処かの道場に吸収されるかもしれないが今はなんとか存続するように頑張っているのだ。
五人対五人の団体戦で第一試合はヴォルデス道場が三対二で勝った。ヴォルデス道場が強い、というよりは
ル=ラオ道場が弱い。やはりヴォルデス道場は強い者は殆ど残っていない。ル=ラオ道場はプレトリア州騎士団所属なだけあって剣より魔道のお国柄が良く出ている。剣が魔道よりも低く見られているのだ。
「なんだ、俺たちの出番はまだなのか」
ロックが不満そうに言う。7組の第二試合は明日だった。
「まあ試合の日程なんだから仕方ないじゃないか。それより他の会場や屋台でも見に行こうよ」
優勝候補の試合を見ることは参考になる筈だ。但し、昨年本選に出場した道場は一次予選は免除で二次予選も一試合少ない。その優遇措置を得る為になんとか本戦に出ようとしているのだ。
「それじゃあクレイオン道場やランドルフ道場の試合か見れないじゃないか」
ロックの言う通りだが仕方ない。
「お世話になったスレイン道場なら一次予選からだから見れるよ」
マコトとクスイー、それに引率のアクシズは何回かスレイン道場に出稽古に行って親しくなっていた。一次予選で当たらなくてほっとしていたのだ。
スレイン道場の試合会場は聖都騎士団所属キズロラ道場だった。昨年はスレイン道場に負けて十四位だった道場だ。本選出場の道場に負けた八つの道場の中で9位から16位までの順位戦も行われるのだ。
昨年の雪辱を晴らす意味でも一次予選からスレイン道場とは当たらないが勝ち残れば二次予選では当たるはずなのでキズロラ道場としては願ってもない組み合わせだった。
会場に着くとシル=スレインが居た。
「なんだ、見に来てくれたのか。ちょうと今から試合なんだ、ちょっとだけ待っててくれ」
シル=スレインは自信満々に会場の中に入って行った。そして言葉通り直ぐに戻って来た。ロックたちは一応試合を見に来たのだが先にスレイン道場が三勝してしまったので、直ぐに終わってしまったのだ。
「ロック、見てくれてたか」
「ああ、凄いな、あの時より数段強くなっている」
出ていたのはスレイン姓以外の三人だがロックたちが出稽古に行った時とは動きが全然違っていた。
「ああ、ローカス道場から出稽古に来てくれて本当に助かった。彼らはいい練習相手になってくれたよ。特にアクシズ=バレンタインは教えるのが上手い」
自分たちの道場が褒められるのは悪い気がしない。ロックは嬉しそうだった。それに相手が強くなってくれると遣り甲斐が出るからだ。
「とりあえず一次はなんとかなりそうだから、二次も残って本選で会おう」
一次予選で勝残った道場が出場する二次予選で八つの道場が勝残り方式で一位を決める。それで本選出場が決まり二位は順位戦に回るのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます