第160話 出稽古⑥

「彼はガーデニア騎士団のガスピー=ジェイル大隊長だよ」


 やはりマゼランの三騎竜筆頭のガスピーだ。


「君はもしかしてロック=レパードくんか?」


 ロックを見てガスピーが問う。


「ええ、初めまして、ロック=レパードです」


「おお、やはり。君のことはクリフに聞いているよ、彼と立合ったそうだね」


「ええ、全然敵いませんでしたけど」


 ロックがマゼランに来て初めて力の差を思い知らされた相手がマゼランの三騎竜の一角クリフ=アキューズだった。


「おいおい、クリフに敵う者なんてマゼランにもそうは居ないぞ。君は相当自信があるのだね」


「いいえ、俺は強い人と剣を交えたいだけです。勿論あなたとも」


 ロックはダメもとで挑発している。ただクリフの時の様には行かない。


「私も君とは一度手合わせしたいと思っているよ。クリフは剣士祭に出るつもりだと言っていたが、君と戦いたいんだろうね」


「ええ、俺も彼ともう一度戦いたいと思っています」


 ここでガスピーと試合う、ということにはならないようだ。


「多分彼も楽しみにしていると思うよ。その時は存分にやってくれ。では私はこれで」


「えっ、最後まで見て行かれないのですか?」


 不意を突かれて思わずルークが聞く。最後のロックの試合まで見て行くものと思っていたからだ。


「ああ、少し急ぐものでね。剣士祭、私もたのしみにしているよ」


 そう言い残すとガスピー=ジェイルは去って行った。


「相当強いね」


「ああ、筆頭だからな。三騎竜全員と試合えないものかな」


 ロックは本気で言っている。ただ、相手が同じチームで出場されてしまうと個人戦が無い剣士祭では三騎竜全員が出場しても一人としか当たれない。


「それはちょっと難しいかも知れないね」


「じゃあ、剣士祭でなくてもいいから全員とやりたいな、ルーク、何か考えてくれよ」


 三騎竜全員と試合うとしたら、その場を整えるのはルークの仕事だった。


「無理言わないでよ」


「無理は言ってない。任せた」


 ロックは言い出したら聞かない。


「それでは続きやります?」


 なんだか気が抜けてしまっている状況で副将戦になるのは既に戦意を削がれてしまっているルークは避けたかったが、相手は一勝も出来ていない手前、こちらから止めるとは言い出せない。


「聞くまでもない。トルク=スレイン師範代と、そちらは?」


「副将戦は僕の出番ですね」


 アクシズの言う化け物の一人の出番だった。

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