第149話 ヴォルデス道場⑤
「ヴォルデス道場は確かに悪い噂はあったけど、あの道場が闇討ちの実行役だったんだね。黒幕か、ちょっと情報は無いな。判った、僕の方でも少し調べてみるよ。何か判ったら連絡する。」
「ありがとう、助かるよ。アクシズさんのことも含めて助けてもらってばかりだ」
「気にしないでいいよ、別に僕にとっても悪いことじゃないから。アクシズはお家再興を願っているんだ、その手助けをしたいだけなんだよ」
ルークからすると、ソニーの本心は判らないし、何かを企んでいることは確かだが確証もないので表面上助けてもらっているだけで十分だと思うようにしていた。
「クスイーくんだったか、君も大変だったね。父上は大丈夫なのかい?」
「ありがとうごさいます。もう剣士としては立ち合いなどできませんが、日常生活はなんとか一人でてせきますので」
「それは良かった。でも剣士祭はそれほど重要な出来事なんだね」
「剣士祭で注目を集めた道場は塾生も集まりますから。元々うちの道場も父が活躍して私塾としては有数の道場に成れたのですが、父の怪我で一気に塾生が減ってしまいましたから」
各州の騎士団所属や聖都騎士団御用達以外の道場は剣士祭で名を売るしか塾生を集める手段が無かった。逆に言うと剣士祭で負けが続いた道場は没落していくのだ。
「そうなんだ。うちの騎士団傘下の道場にも確か騎士団員じゃない塾生はそこそこ居たんじゃないかな」
「アストラッド州傘下のスレイン道場ならかなり大きい方だと思います」
「スレインならよく知ってる。出稽古にでも行くなら僕から伝えておくけど」
それはとても有難い申し出だった。今のところ道場内での稽古は続けているがそれがどの程度通用するのか判らない。ロックを筆頭に個人的には相当行けるとは思っているのだが、上には上が居るかもしれない。
「それは願ってもない。ロック、行くだろ?」
「もちろん。で、そのスレイン道場は強い奴がいるのか?」
「まあ、剣士祭で優勝は無理でも上位には食い込めたり込めなかったり、ってところかな」
「それはあまり強くないんじゃないか?」
「そう言うなよ、ロックやアークと比べると強い人はそうそう居るもんじゃないよ」
「アークとはちゃんと試合いたかった。アークはもう居ないんだな」
「うん、アストラッドにもどっているよ。まあ、いつかそんな機会もあるんじゃないかな」
ソニーは少し何かを含んだ口調で言った。
「マゼランでの修業が終わったらアストラッドに行くさ。その時まであいつも修行を怠るなと伝えておいてくれ」
ロックは本気の様だった。元々東へ東へと向かう旅の途中だ、ガーデニア州を過ぎれば次はアストラッド州ということになる。
「判った、確かに伝えておくよ」
「それじゃあ黒幕の件と出稽古の件、確かに頼んだ、帰るぞ」
ロックは用事が済んだらさっさと帰りたいのだ。
「待ってよ、ごめんねソニー、また来るよ」
「ロックらしくていいよ、確かに頼まれた。期待はしないで待ってて」
「ありがとう、それじゃあ」
ルークとクスイーは慌ててロックを追いかけるのだった。
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