第148話 ヴォルデス道場④
「それで当てはあるの?」
ロックが何も考えていないのは判っているが、念のため聞いてみた。
「ない」
やはり何も考えていなかった。ロックらしいが、それでは動きようがない。
「一人、何か知らないか聞いてみたい人ならいるけどね」
「よし、その人に会いに行こう」
「誰だか聞かないの?」
「いいよ、行こう」
ロックが先頭に歩き出す。どこの誰だか聞いてもいないのに何処に行くつもりだろう。ルークはクスイーは仕方なしについて行く。
「ロック、どこに向かっているの?」
「えっ?知らない。何処に行くんだ?」
「いや、僕が行きたい場所もだいたい合っているけど、行先も知らないで歩き出したの?」
「うん、よく判らないがこっちかな、くらいな感じで。それで間違っているのか?」
「いや、合ってるけど。実はソニー=アレスに聞いてみたいと思ってたんだ」
ソニーがマゼランに滞在している理由は判らないし、アクシズを紹介してくれた本心も判らない。ただ、ソニーならマゼランの闇の部分にも少し知識があるのでないかとルークは思っていた。
ソニーがロックやアークとは違う、少し闇の部分を抱えているとルークは感じていたのだ。
「ソニーか、そうだな、あいつなら何か知っていてもおかしくはないな。よし、じゃあ行こう」
「あの、ソニーさんというのは」
「ああ、クスイーは会った事なかったね。ソニー=アレスは僕たちがロスで例の黒死病事件の時に知り合ったアストラッド州太守の息子さんだよ。」
「ええ、そんな方が今マゼランにいらっしゃるのですか?」
「そうだね。彼の目的はよく判らないけど、最初に会ったのもロスだったし、色々と旅をしているみたいだ。アストラッド侯の長男だと言っていたから、いずれは太守を継ぐ身だとは思うんだけど、護衛も連れずに、ああ、初めて会った時はアーク=ライザーと言うアストラッド州騎士団長の息子が一緒だったけど、今は別行動をしているみたい」
「そうなんですね。そう言えばルークさんもアゼリア公のご養子さんでした。なんだか失礼な事ばかりしているようで」
「気にすることはないよ、僕は僕だし、アゼリア州太守を継ぐなんてことはあり得ないから」
「そうなんですか?」
「あることで狼公を助けたとこがあって、それを恩に感じて僕を養子という事にしてくれただけだから。僕も太守なんて勿論継ぐ気もないし、こうやって旅をしているんだから、クスイーたちと何も変わらないよ」
「ルークさんにそう言っていただけると、少し気が楽になります」
「まあ、同世代の友人としてつきあってくれればいいよ。ロックに付き合うのは大変だけど」
話し込みながら歩いているとソニーの宿に着いた。
「ここだよ」
「ソニーは流石にいい宿に泊まっているな」
確かにその宿はマゼランでも一、二を争う高級宿だった。太守の息子というのは伊達ではない、というところか。
「ソニー、ルークだけど居るかい?」
部屋の扉をノックしてルークが声を掛けると、直ぐにドアが開いた。
「いらっしゃい、ルーク。それと久しぶりだね、ロック。後、その人は」
ソニーは突然の来訪に驚かない。来るのが判っていたのだ。
「彼はクスイー=ローカス。ローカス道場の道場主の息子さんだよ」
「なるほど彼が。それで今日はどうしました?」
ルークはソニーに事の詳細を説明するのだった。
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