第147話 ヴォルデス道場③

「おっ、やる気ならやるぜ」


「ロック、お前とは二度と真剣ではやるもんか。俺もお前とやるまでは自分の腕にそこそこ自信があったんだが、お前は化け物だ。そしてルーク、お前もな。アクシズは達人、クスイーは、よく判らん。それに俺か。確かに剣士祭ではいいとこまで行けるかもな」


 最早マコトも気持ちを入れ替えてしまったようだ。それまでの人生を復讐に掛けてきたのだから、その思いは相当強いはずだが、現実を見るいい切っ掛けになったのかもしれない。


 ヴォルデス道場までガーデニア騎士団に来てもらって道場主兼師範と師範代四人を捕まえてもらった。他の塾生は関与していないようだった。塾生は全員で三十人程度だが、目ぼしい剣士はいなかった。


 道場は一旦騎士団の管理下に置かれるが、いずれは解散することになるだろう、ということだ。その際はぜひともローカス道場へ、という勧誘も忘れていなかった。


 結果、後日二十数人がローカス道場の塾生になるのはまた別のお話。


 マゼラン駐留ガーデニア騎士団のルーリ=メッセス中隊長によるとヴォルデス道場のソル=ヴォルデスは自身の道場のために闇討ちを繰り返していたが、どうも依頼を受けて対象者を襲っていたこともあったらしい。嘱託殺人というやつだ。当然有償であり、裏の仕事だった。その筋では有名だったらしい。


 マコトは腕の立つ剣士を単純に探していたが、実は殺人の依頼がしたいとその筋の者を探していたら直ぐに見つかっていたのだった。


 また、ソルは黒幕ではない、ということだった。あくまで実行部隊の長であり、殺人の仕事を割り振られているだけなのだ。但し、ウォード=ローカスやマコトの父親を襲ったのは自らの利益の為であり、依頼があったわけではないらしい。


「結局、その黒幕とやらをなんとかしないと闇討ちはなくならない、ということか」


「そうですね。以後も我々は捜索を続けます。この度はご協力ありがとうございました。皆さまのことはグロウス大隊長にもご報告しておきます」


「ルーリさん、それは止めておいてほしいな。また変なことに首を突っ込んでいるのかと僕たちが怒られてしまうからね」


「判りました。ではマゼランで何かお困りのことかありましたら何なりとお申し出ください。出来る限りのことはさせていただきます」


 ルーリ=メッセスは真面目が服を着ているかのような騎士団員だった。グロウスの元にはこういった人材が多く集まるのだろう。ガーデニア騎士団は安泰だなぁ、と思うルークだった。


「で?」


「で、じゃないよ。また何か企んでいる顔してる。なんで君はそう自分から危険なことに首を突っ込んでいくんだろうね」


「それは性分だから仕方ない。修行にもなるだろ?」


「命がけの修行なんだよ。判ってる?」


「判ってるさ。黒幕なんだから強いんだろ?」


 ロックは黒幕まで捕まえる気でいる。


「俺はやらんぜ」


 アクシズはもう興味を失っている。マコトが関わっていたから自分も関わったが、それ以上のことをする気は無かった。ロックの様に物珍しいだけで動く気はない。


「クスイーの修行はまだやっと始まったばかり、と言っても過言ではないからな。俺はクスイーと道場で続きをやっているよ」


 クスイーはやっと相手の剣に合わせられるようになってきた。但し真剣で本当に襲ってくる相手限定だ。そして攻撃するときには自分の剣速を十分発揮できるのだ。


「僕はもしかしたら実戦でないと駄目なのかも知れません」


「おいおい、それでは修行が出来ないじゃないか。実戦で練習するしかない、というのはやはり問題だが、何かいい方法はないものか」


 練習ではどうしても剣速が抑えられない。攻撃する時はいいが防御が全く出来ないのだ。


「よし、それじゃあクスイーと俺で黒幕を探そう」


 ロックが無茶を言い出す。


「それで実戦を積み重ねれば十分な修行になる」


「ロック、それはあまりにも危険じゃないかな」


「俺が付いているから大丈夫」


「それはそうなんだけど」


「ルークも付いて来ればいいじゃないか」


 ロックはもう言い出したら聞かない病が発症してしまっている。結局ロックとルーク、クスイーが黒幕捜索に行くことになった。アクシズとマコトは道場で修行だ。マコトも道場に住むことになった。これで五人揃ったわけだ。

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