第128話 ロー カス道場Ⅱ④
クスイーの修行は続く。どうしても自分の剣の速さに他のところがついて行けない。相手の剣に速さを合わせられないので受けることが出来ないのだ。
「少しショックだな。俺もそこそこ強いと思っていたが、俺の剣が遅すぎて空振りしてしまうなんて。」
「でも僕の剣も一度もアクシズさんに当たりませんよ。」
「まあ、それは熟練の技ってやつさ。お前の剣は真っ直ぐなんで速さは尋常じゃなくてもなんとか躱すくらいはできるんだよ。だから俺くらいの腕の相手には通用しないと思わなければいけない。俺たちは剣の速さよりも技で相手を倒すんだよ。」
そう言われてもクスイーには全く理解できてはいない。
「それはそうと、お前は自分の剣が見えているのか?」
「ええ、なんとか見えています。」
「ということは俺の剣も当然見えているよな。」
「見えていますね。」
「で、何で躱せないんだ?」
「さあ、僕にも分かりません。」
本当に剣士祭に間に合うのか?と心配になるアクシズだった。
「今日はこれで終わりにするぜ。ちょっと用があるから帰る。」
「用ってなんだよ。まだ早いぞ、もう飽きたのか?」
「飽きたんじゃないがロックとやっても俺が上手くなったと感じられないんだよ。確かに全く剣も当たらなかったのが今は受けてくれる回数が増えたがな。」
「それで用っていうのはまた道場破りをしている、というのは無しだぜ?」
マコトは少し表情を変えたが直ぐに笑顔になる。
「馬鹿言うなよ、そんな訳ないだろう。ちゃんと自制しているさ。じゃ、そういうことで。」
道場を出るマコトの背中を見て、どういう事なんだ、とロックは思ったが口には出さない。マコトの様子がおかしいことはルークに伝えてあるのでジェイあたりに見張らせているはずだった。今のところ変な動きをしているという報告は無かった。
そこへ丁度ルークが戻っってきた。
「なんだ、マコトはもう帰ったんだ。」
「何か用があるとか。それで今日は何か収穫があったか?」
ルークはマゼランの街を隈なく回って情報収集に努めている。他道場の剣士祭の出場予定者の強さや癖を見て回っているのだ。ロックが優勝したいと言うのならルークはその手伝いをする。二人にとっては自然な流れだった。
「いくつか州騎士団所属の道場を回ったけどランドルフ道場とルトア道場の二つ以外はそれほど注意しなければ
いけない所は無いんじゃないかな。一人二人、強そうなのは居たけど五人揃っているのは、二つだけだったよ。あとは聖都騎士団御用達の道場だけなんだ。」
「そうか、それは残念。」
「なんで残念なんだよ。」
「もっと強い奴が沢山いて欲しいじゃないか。」
ロックは強い相手全員と立合いたいとすら思っているようだ。剣士祭は五人づつのトーナメントなので全ての道場とは当たらない。ロックにはそれが不満だだったのだ。
「どうして総当たりとか個人戦は無いんだろうな。」
「時間がいくらあっても足りないからだよ。」
「それにしても折角マゼランに居るのに三騎竜とかには全く出会えないな。どこに行けば会えるんだろう。」
「明日は三騎竜のことを調べてみるよ。」
「それは有難い。で、俺はマコトが帰ったんで暇なんだが、ルークも暇だろ?」
「えっ。」
「たまには試合おうぜ。」
こうなったらロックは言うことを聞かない。ルークは久しぶりにロックと立合うことになってしまった。
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