第129話 ローカス道場Ⅱ⑤
「本当にやるの?」
ルークが尋ねるがロックはやる気満々だ。
「へぇ、二人が立合うなんて初めて見たわ。」
いつの間にかミロも加わっている。クスイーとアクシズも興味津々だ。
「始め!」
アクシズの合図で二人が少し離れた。ロックはさっきまでマコトと試合っていたのだが特に疲れてはいない。手を抜いていた訳ではないが、それほど真剣にもなっていなかったからだ。身体が温まっている分、ほぼ万全と言ってもいい。反してルークは外回りから帰ったばかりだし、普段もあまり剣を握っていなかった。
「どうした、ルーク。打ち込んで来いよ。」
「嫌だよ、相手を疲れさせて、というのが君の常套手段じゃないか。」
確かにロックは相手の剣を躱し続けて疲れさせてから料理することが多い。ただそれは楽に相手を倒すためであり、強い相手の場合は別だった。そしてルークはロックが手を抜けない相手だった。
「じゃ、こっちから行くかな。」
そういうとロックが上段から打ち込む。ルークが躱すがロックの剣がそのまま斜め上に跳ね上がる。辛うじて躱すルークの前髪を掠める。
今度はルークの剣が真横に振られる。ロックは紙一重で躱す。どちらも相手の剣を受けない。ただルークは自分の剣の勢いで身体が少し後ろに回ってしまう。そこにロックの剣がまた振り下ろされる。
流石に今度はそれを肩越しにルークが受けた。
型を決めて演武でもやっているかのようだが一連の流れは勿論即興だ。クスイーは目で追うのがやっとだった。クスイーは自分の剣も追えないがロックたちの剣も追えていない。
二人はまた正眼に構える。今度はルークが打ち込む。今までの剣の速さとは段違いだ。ロックですら躱せないのか今度は受けた。マコトとの試合では一度も受けたことが無いロックだった。
「流石だな。」
「流石だね。」
お互いが同じ感想だった。アクシズはロックが自分と試合った時はやはり万全ではなかったことを痛感していた。この二人は別格だろう。
「いつの間にそこまでになってたんだ?」
剣を収めながらロックが問う。
「一人でちゃんと修行していたんだよ、ロックに置いていかれないようにね。」
「そうかぁ、でもルークとはもうやらない。」
「えっ、どうして?」
ルークは意外だった。今の実力をロックが知ったらずっと修行に付き合わされると思っていたからだ。
「真剣でやりたくなってしまうからな。木刀ではやっぱり本当の力が出せない。」
「そう来たか。まあいいけどロックと真剣でやり合う気はないよ。」
「いつか、きっとその時が来るさ。」
ロックは予言のようなことを言った。ルークは縁起でもないと思う。ロックと命をやり取りをするような事態を想像すらしたくなかった。
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