第125話 ローカス道場Ⅱ
ソニーと別れた後、ルークはアクシズ=バレンタインを連れてローカス道場に戻った。アクシズは宿を引き払って荷物を纏めて付いてきたのだ。最初から話が出来ていたかのようだった。
「戻ったよ。」
「お、ルーク、お帰り。ソニーはどうだった?ん、その人は?」
ロックはすぐにアクシズに気づいた。てっきりソニーを連れて帰ってくると思っていたので驚いているようだ。
「うん、彼はソニーに紹介してもらったアクシズ=バレンタインさんだよ。」
「アクシズだ、よろしく。」
「ロックだ、ソニーじゃなかったんだな。まあ、腕が立つならだれでもいいけど。」
ロックの本音が言葉になって出てしまっている。
「そうだな、まあ、ソニーよりは役に立つと思うぞ。」
「それは有難い。ではちょっと一回立合ってみないか?」
ロックの悪い癖だ。とりあえず腕を確かめないと気が済まないのだ。
「いいぜ。」
アクシズは直ぐに応じて道場の中央に立つ。確かに腕は立つように見える。ロックも苦戦するかもしれない。
「じゃ、僕が立会人でいいね。始め!」
マコトの時と違い今度は二人とも全く動かない。二人とも正眼に構えたままピクリともしない。クスイーもマコトも息を呑んで様子を見ている。このままでは埒が明かないのでルークが仕掛ける。木刀で床をドンっと突いたのだ。
「エエイ!」
珍しくロックの方から切り掛かる。一振り、二振り、ロックの剣をアクシズが躱す。アクシズからは打ち込んで来ない。
「凄いな、ロック君と言ったか、御前試合優勝は伊達じゃないね。」
アクシズは余裕があるようだ。ただルークはロックの動きに少し違和感を感じていた。
今度はやっとアクシズから打ち込む。それをロックは躱すのではなく受けた。受けるのに精一杯とは言わないが余裕があるようにも見えない。やはりロックの様子がおかしい。
「ロック、どうしたんだ?」
思わずルークが声を掛ける。何時ものロックの動きではない。
「大丈夫さ。でもこのまま続けると負けるかも知れないな。」
ロックは素直に思ったことを口にした。
「まさか、君が負ける所なんて想像が付かないけど。」
アクシズの打ち込みをやはり躱すのではなく受けている。しかし、いつもなら受けてから反撃するロックなのだが、どうもそれが出来ていなかった。反撃する余裕が無いということなのか。
「ロックはずっと僕とマコトの相手をし続けていたんだよ。」
クスイーが事情を話してくれた。ルークが出かけている間中ずっと二人と試合っていたというのだ。それも休みなくらしい。
「なんだ、万全ではないのか。それでは相手にならないじゃないか。」
アクシズは剣を収める。
「いや、実勢では疲れているからなんて言ってはいられないから気にしなくていいよ、でも確かに強いな、本当に負けそうだった。」
「疲れ果てた相手に優勢だったとしても自慢にはならんよ、俺の負けで良い。」
アクシズ=バレンタインは得体は知れないが、もしかしたらいい奴なのかもしれない。
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