第124話 ローカス道場⑩

 ミロを含めて四人を道場に残してルークは道場を出た。ソニーにもう一度会うためだ。ソニーは部屋に居た。


「どうしました、ルーク。」


 ソニーは特に驚いた様子もなくルークを迎え入れた。来ることが判っていたようだ。


「ソニー、実は話していた通り一人は見つかったんだけどあと一人なんだ。力を貸してくれないか?」


「その話なんだけど、やはり僕はアストラッド太守の息子という立場で君と一緒に大会に出るわけには行かないと思うんだ。うちの騎士団が修行している道場もいくつかあることだしね。」


 まあソニーの言い分は十分予想されていたことだ。一旦は考えると言ってはくれたが、最終的には駄目なのだろうとルークは思っていた。そこで次の案だ。


「そうか、仕方ないね。じゃあ誰か紹介してくれないかな。」


 ソニーはあてにしていなかったがソニーの人脈には期待していた。ただ大っぴらにマゼランで活動していた訳でもなさそうなので淡い期待だったが。


「紹介か、ちょっと待って。」


 ソニーは少し考えていたが何かを思いついたようだ。


「そうだな、受けてくれるかどうかは判らないけどどこの道場にも属していない、でも腕は経つ人物に一人心当たりがある。行ってみるかい?」


「ありがとう、ぜひ紹介してほしい。で、その人は君の知り合いなのかい?」


「知り合い、というか、まあ、そうだな、知り合いということでいいんじゃないかな。歳は僕たちより5、6歳上だと思う。剣の腕はアークとそれほど変わらないくらい、ということだから大丈夫なんじゃないかな。」


「アークと変わらないなら相当強いという事じゃないか。それは有難いけど僕たちに協力してくれるかな?」


「それは本人に聞いてみないと判らないけど、まあ僕も頼んであげるよ。」


 ソニーがそんなに力になってくれる訳は判らないがルークとしては有難い。


「じゃ、それほど遠くないから今から行こう。」


 ルークは念話でジェイに行先が判ったらすぐにロックに知らせに行ってもらうことを頼んでソニーについて行った。


 相手の部屋には直ぐに着いた。ソニーが泊まっていた宿とは少し違って庶民的な建物だった。


「アクシズ、居るかい?ソニー=アレスだ。」


 ソニーがドアを叩きながら言う。直ぐにドアが開いて青年が出てきた。無精ひげを生やしているので少し草臥れた印象だった。


「どうしたソニー。今日の予定は無かったはずだが。」


「ごめん、ちょっと頼みがあって、ああ、彼はルーク、ルーク=ロジック、アゼリア狼公の養子さんだよ。」


「ルークと言います。宜しくお願いします。」


「ああ、俺はアクシズ=バレンタイン、ソニーとは、まあ、そうだな知り合い、ということでどうだ?」


 二人とも似たようなことを言う。関係を他に表現できない関係、ということだろうか。


「いいんじゃない。それでさ、ちょっと頼みがあるんだよ。」


「珍しいな。で、頼みの主はルーク君ということか。」


「はい、そうです。というか僕ではなく僕の友人の頼みなんですが。実は僕も巻き込まれているだけです。」


「前に話たろ、ロック=レパードの頼みというわけなんだ。」


「あの御前試合の優勝者か。なるほど、なんとなく判った。それで、それはお前の中で問題ないと判断したんだな?」


「うん、大丈夫。出来得る限り彼の役に立ってあげて欲しい。」


「お前がそう言うなら、判った、ルーク君、君の頼みを聞こう。」


 ルークは色々と聞きたいことも多かったが全て呑み込んで剣士祭への参加を依頼するのだった。

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