第123話 ローカス道場⑨
「なんだと、まず俺が負けることはないだろうが、万が一負ければこの道場に入らなければいけないのか。」
「そうだ。それが立合う条件だ。」
青年は少し考えたが直ぐに、
「判った。それでいい。では、始めるぞ。」
青年はロックの前に立った。その佇まいからすると確かに相当な使い手ではあるようだ。
「ルーク、合図を。」
「判った。では、始め!」
二人が正面から少しずつ左に回り始める。間合いはまだ詰めない。少し回った後、不意に青年が仕掛ける。
「キェイ。」
なんとも言えない掛け声で上段から斜めに切り掛かった。クスイーのように上段から真っ直ぐ振り落とされたのなら受けるのは容易いのだが、斜めに振り下ろされると受ける角度の調整が難しい。しかし、ロックはその難しさを感じさせない。
「おっと。」
ロックは拍子抜けする声で受ける。暫らくは相手に自由に打ち込ませる気のようだ。
何度か打ち合い、というか青年が打ち込みロックが受け流すことを繰り返した。
「うん、判った。」
ロックはそう言うと青年の打ち込みを受けるのではなく払い除けて逆に相手に打ち込んだ。青年は初めてロックに反撃を喰らって、その剣の速さと強さに打ち負けてしまい剣を落とす。
「はい、それまで、ロックの一本勝ち。」
ルークはロックの勝利を宣言した。
青年の腕はまだ痺れていて剣を持つことが出来なかった。
「結構強いね、よかった、強い人が見つかって。」
「結構強い、ってお前は何者なんだ?俺は今までいろんな道場を回ってきたが一度も負けたことは無かった。聖都騎士団や大手の道場は相手にしてもらえなかったが、それでも一度も負けなかった。その俺がああも簡単に。お前、とんでもないな。」
痺れた腕をさすりながら青年は座り込んだ。
「まあ、そこそこの腕だとは思ってるよ。」
「ロックは今年の御前試合の優勝者なんだよ。」
「そうなのか。でも多分三年前の優勝者とは立ち合ったことが有るが俺の方が強かったぞ。」
「まあ、俺が特別なんじゃないか。」
ロックは満更でもない様子だ。
「約束通り道場に入って剣士祭に出てもらうからよろしくな。」
「剣士祭?ああ、そんな祭りがあると聞いたな。お前たち、そのなものに出たいのか。」
「強い奴と試合えるのは嬉しいだろ、お前もその仲間だと思うけど。」
「まあ、そうだな。俺は強い奴と戦いたい。自分が一番だと証明するために故郷を出てきたんだからな。俺の名前はマコト=シンドウ、よろしくな。」
ソニーを計算に入れれば五人揃った。都合が良すぎるくらいでルークは少し懸念もあったが、ロックが単純に喜んでいるので口を出さないことにしたのだった。
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