第122話 ローカス道場⑧
「うちの塾生はとてもじゃありませんがお眼鏡に適う者はいないでしょう。ロック=レパードの名は聞き覚えがあります。今年の御前試合の優勝者でしたね。そのような強者と肩を並べる剣士は当道場にはおりません。お力になれず申し訳ない。」
上辺だけの言葉でザビスはルークを追い返そうとしている。狼公の養子、と言う存在がどのような立場なのか、自分にどのような影響力があるのか、判断が付かないでいるのだ。ルークの役に立つことが有意義な事なのか判らなかった。
確かに道場を見るとそれ程の手練れが居るようにも見えなかった。弱小とは言わないがマゼラン最強を名乗るには程遠いようだ。
「判りました。でもこの道場の方のお力を狩りに来たのではないのです。誰か紹介してもらえないかと思って。」
そうなのだ、元々モントレー道場の塾生を借りる気は無かった。ただ手伝ってくれそうな人物を知らないか、ということを聞きたかっただけなのだ。ルークはやはり狼公の養子の立場を利用したくなかった。
「そうですね。ただ名のある剣士は必ずどこかの道場に属していると思いますがね。ああ、一人だけ心当たりがあると言えばありますが。」
「本当ですか、それは誰なんです?」
「いや、辞めておいた方がいいと思いますよ。強いことは間違いないのですが彼には問題が多すぎる。」
ザビスがいう所によると、その剣士は道場破りのような事を繰り返しているらしい。どこの道場にも所属していおらず有名な道場を次々と訪れては他流試合を申し込んでいるが大手の道場は相手にしていない。少し格下の自由道場は数軒試合ったらしいが、全て勝ったとのことだ。
ただ相手をした道場は売名行為で受けただけだったのだが逆に利用されてしまっている。その剣士の名は今のところまだ知られていないし、どこに居るかが判らない、というのだ。これでは探し様がない。
「うちにも一度来ましたが追い返しました。ここ数日、毎日のようにどこかの道場を訪れてはいるようですが。」
名前も住んでいるところも判らない男を探すには相当な偶然でも重ならない限り無理な話だろう。今からでは到底間に合いそうもない。
「貴重なお話、ありがとうございます。探してみます。」
そう言うとルークとミロはモントレー道場を後にし一旦ローカス道場に戻った。
「どうだった、誰か見つかったか?」
ロックにそう言われたがルークは言いあぐねていた。あまりにも雲を掴むような話しか聞けなかったのだ。
「うわさが聞けた、くらいかな、ごめん、今のところ全然だ。」
ルークは聞いた話をそのままロックに伝えた。
「その話、最近よく聞きますよ。この辺りの道場もいくつか襲われたとか。」
「その道場破りが来てくれれば、俺が打ち負かして無理やりにでも塾生にするんだけどなぁ。」
「そんな都合よく行くはずないよ。」
「それもそうだな。もう明日には間に合わないかな。」
その時道場の扉が開いた。
「おい、ここで一番強い奴を出せ。」
そこにはロックたちより少し上の青年が立っていた。相当な偶然が重なったのか?
「多分俺かな。」
すぐに状況を理解してロックが応える。道場破りだ。そんな都合よく行くものなのか。
「最近話題の道場破りってのはお前か?」
「話題かどうかは知らんが道場破りを続けていることは確かだ、それが噂になっているのだろう。で、お前が一番強いのだな。というか、この道場には他に人はいないのか?寂しい道場だな。」
どうもこの青年はマゼランの道場事情には詳しくないらしい。知っていたらローカス道場には来なかっただろう。
「そう言うな。で俺が立合えばいいんだな?だが立合うには条件がある。」
「なんだ、条件だと?」
「俺に負けたらここの塾生になって欲しい。それだけだ。」
ロックの頭の中での計算では、これでソニーを入れて五人集まった。
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