第119話 ローカス道場⑤

 一行はアイリスを再びルトア道場に連れて行った。勿論道場のものたちが居るのだがクスイーがどうしても行くと聞かなかったのだ。


「もう二度とあんな真似はしないで欲しい。」


 クスイーが別れ際にやっと伝える。


「どうして?うちの道場のことなのよ、あなたに関係ないでしょ。」


 アイリスは判ってやっているのか、クスイーに冷たい。巻き込みたくない、という事なのかも知れない。


「関係はないけど、あの、しっ、心配だから。」


「あなたに心配してほしいなんて頼んでいないわ。それよりもちゃんと道場を再建しなさい。」


 アイリスはそう言って道場の中へと消えた。


「そうだぞ、うちの問題なんだ、関係ない奴は消えろ。」


 リンク=ザードが捨て台詞を残してアイリスの後を追った。リンクが師範代ではランドルフ道場に勝てないのではないか、と心配になってしまう。


 三人はミロの待つローカス道場にやっと戻って来た。ロックはまだまだ暴れ足りない様子だったが、少しは満足している風だ。


「相変わらずロックは化け物のような強さね。」


「ミロ、それは褒めているのか貶しているのか?」


「呆れている、というだけよ。」


 ミロは本当に呆れていた。マゼラン一を謳うランドルフ道場の塾生を五十人以上一人で倒してしまうのだ。相手が可愛そうだとしか思えない。


「さて、それにしてもあと二人だ、どうしようか。確か締め切りはあと少しと聞いたけど具体的にはいつまでなんだ?」


 ロックがクスイーに尋ねるがクスイーは何を聞かれているのか判らない、という表情だった。


「剣士祭の申し込みの締め切りだよ、もう近いんだろ?」


「えっ、本気で出るんですか?人数が足りませんよ。元々出るつもりもありませんでしたから詳細も知りません。」


 それはそうだ、一人では元々出場できない。剣士祭は五人一組でないと出場できないのだ。


「じゃあ明日詳細を聞くのと塾生集めだな。」


「それは僕とミロでやるから、ロックはクスイーをなんとか戦えるようにしてあげてよ。多分ランドルフ道場と戦いたいと思っている筈だから。」


「え、いや、僕はそんなことは。」


「いいよ、君かアイリスを好きなことは見てれば判るし、彼女を襲ったランドルフ道場を許せないと思う気持ちも判るから。」


 クスイーは顔を真っ赤にして下を向いて黙ってしまった。ルークも判っていても言わない、という腹芸はできないタイプなのだ。


「確かにクスイーの剣を振る速さは俺よりも速い。もしかしたらマゼランで一番かも知れないな。でも相手の攻撃は受けられないし、一太刀目を躱されたら次が無い。その辺りをなんとかしないと試合には出られない。あと二月で一人前に仕上げないと。」


 明日からは忙しくないぞ、とワクワクしながらロックは早々に就寝するのだった。

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