第118話 ローカス道場④

 十人、二十人。ロックの相手にはならない。


「休ませるな、次だ。」


 休ませるなも何も、ロックはほぼ全員に対して一太刀で片づけている。これくらいで疲れはしない。


 三十人、四十人と続く。そろそろ道場に居る全員と立合うことになる。さすがに先ほどから指示を出しているランドルフ道場の高弟とみられる男が焦りだした。全員が敗れるとは思ってもいなかったのだ。


「もう一回りだ。」


 負けた者をもう一回立合わせる。高弟は何かを耳打ちして奥に人をやった。もっと上の者が出てくるのかもしれない。ロックはその様子を見ていてワクワクしてきていた。いい奴でも悪い奴でも剣の達人とは立ち合いたいのだ。


「一斉に掛かれ。」


 業を煮やして高弟はそう言い放った。五十人以上が一斉にロックを囲めばさすがに逃げ道すらない。人海戦術の極致だ。


「それは反則だよ。」


 見かねてルークも参戦する。クスイーも輪の中に入った。


 高弟は驚く。ロックだけではなかったのだ。ルークも相当強い。ロックと比べると線が細くとても剣の達人には見えなかったが、ロック程ではないにしても今いる塾生では太刀打ちできない。


 それとクスイー=ローカスだ。高弟はクスイーを知っている。試合を見たことはないが、一度も勝ったことが無いことは有名だった。


 高弟は再び驚く。クスイーの剣が見えないほど速い。尋常ではない速さだ。囲まれているので狙いを付ける必要が無い。尋常ではない速さの剣を縦横無尽に振るうのだ。塾生たちは三人にどんどん倒されて行く。もう立っているのは高弟一人になってしまった。


「なんだ、どうした。まさか殺したんじゃないだろうな。」


 大変です、と呼ばれたロマノフが出てきた。状況をみて愕然とする。塾生は一人を除いて全員床に倒れていたのだ。


「まさか。全員か。おい、パーレ、これはいったいどういう事だ。」


「俺が本物だ、という事じゃいなか?」


 代わりにロックが答えた。


「なるほど、どうやらそのようだな。ロック=レパードだったか。君が本物だと認めよう。ではお引き取り頂こうか。」


「いやいや、それでは話が違う。俺が本物という事はさっきの話も本当に事だということになる、認めることだな。」


「何のお話でしたか?」


 ロマノフは惚ける。


「ルトア道場のアイリスをお宅の手の者が襲った、ということだよ。このまま騎士団詰所に連れて行ってもいい。どうする?」


「なるほど。それで私どもにどうしろと?」


「約束するだけでいい。二度とアイリスに手を出さないと。もし守らなければ俺がまたここに来るだけだがな。」


 脅しなれて居ないのでロックはあまり怖くない。ただ剣の腕は確かなので威嚇にはなるのだ。


「それだけで?」


「それだけだよ。金を寄越せなんて言わないさ。あとは、そうだなルトア道場やローカス道場が剣士祭に出場できなくなるようなことはするな、と言うだけだ。」


「ローカス道場は元々出られないのでは?」


 ロマノフは人数のことを言っている。五人も居ないことを知っているのだ。ロックが居るだけで脅威にはなるが人数を揃えるのは難しいというのだろう。そこは表立ってはやらないだろうが邪魔してくる可能性が高い。


「いや、出るよ。俺とルークとクスイーとあと二人、ちゃんと揃えてやるから、そちらも準備万端で出てくればいい。正々堂々と試合うのは気持ちいいぜ。」


 ロックたちはそう言い残してランドルフ道場を後にした。

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