第112話 剣の道⑧
「渡さないとどうなると言うんだ?」
ロックはやる気満々だ。ルークとミロは少女を連れて少し離れた。ロックの邪魔になってしまうからだ。相手は剣士風ではあるが、それほどの腕とも思えない五人。ロックの敵ではない。
「痛い目に遭う、という事が判らないのか?」
「判らないなぁ、教えてくれるかい?」
「ええい、やってしまえ。」
リーター格の男が嗾けた。四人が一斉に剣を振るう。
一人躱し、一人を盾にして一人を倒す。また一人を躱し一人を盾して一人を倒す。あっという間に四人ともが地面に転がった。残るはリーダー格一人。ロックの動きを見て到底敵わないとみると手下たちを置いて一人逃げてしまった。
「お、覚えてろよ。」
「うん、覚えているからまたおいで。」
ロックは完全に揶揄っていた。
「お嬢さん、もう大丈夫だ。怪我はないかい?」
「ありがとうございます。強いんですね。どこかの道場の剣士様ですか?」
「ああ、確か、えっとルーク、なんていったっけあの道場。」
「ローカス自由道場だよ。」
「そうそう、それ。」
「道場の名前を憶えてないんですか?」
「さっき入ったところだからね。今から荷物を持って入塾するところなんだ。」
「そうでしたか。それにしてもローカス自由道場ですか。」
少女の顔が少し暗くなった。何かあるのだろうか。
「ローカス道場に何かあるのかい?」
「いえ、今は誰も塾生が居ないとお聞きしていましたので。」
少女は少しはマゼランの道場の状況を知っているようだ。どこかの道場の関係者だろうか。
「それよりどうして追われていたの?あの男たちは誰かな?」
少女は少し話し難そうにしている。ロックは厄介ごとに積極的に首を突っ込むタイプだ。どうしても事情を聞く気だった。
「ロック、ここでは。」
「そうだな、俺たちの宿で事情を聞かせてくれるかい。力になるよ。」
少女はまだ決めかねているようだ。
「俺の名前はロック=レパード。聖都騎士団の副団長は俺の父だ。そしてこいつはルーク=ロジック、アゼリア州太守ロジック狼公の養子だ。変な奴じゃないから心配はいらないよ。それと彼女はミロ=スイーダ、俺たちの旅の同行者だ。最後におい、ジェイ。」
どちらかと言うとルークよりはロックの方が変な奴に見えるとは思うがロックはそう紹介した。
(儂を最後のオチにしておらぬかお主。)
「きゃっ、ネズミ。」
(失礼な奴じゃ。儂は齧歯類ではない。誇り高き猛禽類の王ブラウン=ジェンキンだ。)
少女は少し落ち着いてきたようだ。一行に不信感もない。
「判りました、お話しします。」
少女を連れて一行は宿へと戻るのだった。
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