第107話 剣の道③
渋々の二人を連れて、ロックはいくつもいくつも道場を回った。しかし、中々これといった道場には当たらない。一行は昼食を取りながら作戦会議を開くことにした。
「闇雲に探しても無理だと思うよ、ロック。先にどこかで情報を得てからいくつかに絞って見学に行ってみたらどう?」
正論だった。最初からそうすればよかったのだ。
「あちこち歩き回って疲れたわ。私はここで待ってる。それか宿に戻るわ。」
「判ったって。単純に連れまわした俺が悪かった。でもミロの道場も探さないと駄目なんだから本人が居ないと話にならない。それより情報は良いけど、どこでそんなことが聞けるんだ?」
ルークは店主に話しかけた。
「おじさん、ちょっと聞きたいんだけど、マゼランで今一番有名な道場ってどこなのかな?」
「一番かい、それは少し難しいな。聖都騎士団の専属道場が有名なんだが他にも各州の騎士団が修行している道場も競い合っているしな。人によってはグロシア州騎士団傘下のランドルフ道場が最強だと言うし、人によってはガリア州騎士団傘下のルトア道場が強いというし。我がガーデニア州傘下は数が多くてどの道場が強いとはなかなか言えないしな。」
こういうことは商売人に聞くのが一番だ。
「そうなんだ。じゃあ、マゼランで一番強い剣士って言ったら誰なんだろうね。」
「そうだなぁ、まあ一番有名なのはマゼランの三騎竜だろうな。」
「マゼランの三騎竜?」
「そうさな。ピティアス=シェア、ガスピー=ジェイル、そしてクリフ=アキューズ。その三人を総じてマゼランの三騎竜と呼ぶんだよ。」
ロックの眼が輝き出す。
「その三騎竜って人はどこに行ったら会えるんだ?」
「彼らはガーデニア州騎士団所属なんだが他の道場にも教えに行っているから、どこに居るかは判らないな。聖都騎士団も教えているし。あのリード=フェリエスにも引けを取らない剣士様だわな。」
「リード=フェリエスって、あのホーラ長官の?」
「そうだよ、剣聖ヴォルフ=ロジック狼公の跡を継ぐと言われているお方だよ。」
ロックは興味津々に訊いている。リード=フェリエスは今シャロン公国一と言われている最強の剣士だ。公国の情報機関、ホーラの長官を務めている。聖都騎士団では准将軍待遇だった。いずれ試合たいと熱望している相手だ。現役当時のヴォルフ伯父とどっちが強いかと聞いたらリードだろう、と答えられた。謙遜もあるだろうがヴォルフ伯父が認めていることは確かだ。
「それは強そうだ。で、どこに行けば一番会えそうかな。」
「会う、ってお前たち、会ってどうするんだ?」
「試合う。強ければ教えを請う。」
「試合うだって?無理だよ、そんなの。彼らはあちらこちらの道場で教えるのに忙しい。お前たちのような素人の相手なんてしてくれないよ。」
ロックは少し見栄っ張りなところがある。というか正当な評価を求める、ということに敏感だった。
「俺は今年の御前会議で優勝しているんだが、それでも無理か?」
「なんと、そうか、聞いたことがある。聖都騎士団のレパード副団長の息子だとか。」
「そう。俺がロック=レパードだよ。それとこいつは剣聖ヴォルフ=ロジックの養子だ。」
「まさか。そんな話は聞いてないな、ロジック狼公に養子だと?確かに狼公は独り身だとは聞いていたが養子をとったとは聞いていないぞ。お前たち、俺を騙そうとしていないか?」
「あんたを騙しても何の得にもなりゃしないさ。確かにルークの養子の話は世間では知られていないだろうしな。だが俺がロック=レパードというのは本当のことだ。だからその三騎竜の居そうな場所を教えてくれないか。」
店主は不審そうにはしていたが、教えても何か出来る訳でもないと心当たりの場所を教えてくれた。
「ロック、僕の話はあんまりしちゃだめだよ。不要な厄介ごとに巻き込まれかねないんだから。」
「悪い、悪い、ついな。じゃ、早速行こう。」
一行は教えられた聖都騎士団傘下の道場に向かうのだった。
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