第66話 陸路を行く②

 キャラムでは馬車を用立ててすぐにトレオンに向けて出発した。順調にいけば10日ほどで付くはずだ。途中小さな街はいくつかあるが野宿を重ねて先を急ぐことにしていた。


「ミロ、野宿ばかりで平気か?」


「大丈夫、気にしないで。早くエンセナーダを抜けてマゼランに行きたいんでしょ、ホント修行馬鹿なんだから。」


「心配してやってるのに馬鹿とはなんだよ。」


「ロック、ミロは照れてるだけだよ。」


 ミロは何も言わないで離れて行ってしまった。


(ロックには女心は解るまいて)


「こんな時だけ出てくるんじゃないよ、ジェイ。」


 使い魔のブラウン=ジェンキン(本人曰く猛禽類の王)は見た目はネズミにしか見えないが少し魔道が使えることと、自らの姿を隠せるので偵察には打って付けだった。馬車での移動時も先行して何か異変が無いかを偵察してくれるのでロックたちも安心して旅ができるのだ。


(おい、ミロが居ないぞ)


 ジェイが慌てて伝えて来た。確かになかなかミロは戻ってこなかった。近くをジェイが探してくれていたのだろう、それが見つからないのだ。


「どうこまで行ったんだろう、ロック、探しに行こう。」


「判った、手分けして探そう。ジェイも頼む。」


 二人と一匹はバラバラに分かれてミロを捜しに出た。確かに近くに人の気配が無い。ただ用を足しに行っただけだと思っていたので、少し離れても気にしていなかったし、むしろ気配を探らないようにしていたのが仇になった。


 離れた時に向かった方向を含めて、どこを探してもミロの姿はなかった。


「誰かに攫われた、ってことかな。」


「まさか、終焉の地か。」


「可能性はあるけど、ルシアはザトロス老師が連れて行ったから別行動だと思うんだ。」


「そうだよな。ルシアと別れた終焉の地の残党、ってとこかな。」


「かも知れないね。もしそうなら僕たちを脅す人質にしようとしているのか、裏切ったミロを粛正しようとしているのか、によってミロの扱いが変わりそうだ。」


 元々ミロはロックたちを罠に嵌めるためにルシアが用意したのだった。それを最終的には裏切って、今はロックたちと旅をしている。終焉の地の構成員としては面白い筈がなかった。


「俺たちへの人質ならいいが、そうじゃないなら急がないとミロがどんな目に遭わされているか解ったもんじゃないな、急いで所在を掴まないと。」


「そうだね、ジェイにも手伝ってもらって広域の探索魔道を掛けてみるから、ちょっと待ってて。」


 そう言うとルークはジェイと同時に詠唱を始めた。同時詠唱をすることでより広域の探索が可能になるのだ。


「見つけた。やっぱり終焉の地の残党みたいだ、見覚えのある顔が見える。街道を離れて北東に向かって馬車を走らせているみたいだ。このまま街道を北に向かっていたら全く追いつけない。」


「判った、直ぐに同じ方向で追おう。」


 二人と一匹は道なき道を追うのだった。

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