第6章 街道の要所エンセナーダ

第65話 陸路を行く

 三人と一匹はキャラムに着いた。キャラムはロスよりは小さい港町だ。ロスとシャロン公国最大の港レントとの中間に位置して小型船の中継地になっていた。大きな船舶は停泊できる施設はなかったので、その意味でも小さい港だった。


「どうする?」


 ロックが問う。どうする、とはキャラムから南海道をこのまま東に向かうか、一旦北に向かいトレオンを経由して内陸を東に向かうか、もしくはキャラムから船と言う選択肢もある。


「どうしようか。本当はロスから船で、と思ってたから船というのも有りかもね。」


「私は船はちょっと。」


 ミロはどうも船酔いするらしい。実際にはほとんど船に乗ったことがないのだが。


「じゃあ南海道をこのままレントまで行くか。途中はあまり街はないけど。」


「トレオンにしない?内陸側って行ったことないから。」


「何でミロに決められるんだよ。」


「いいじゃない、どうせアテはない自由な旅なんでしょ。」


 ミロのいう事にも一理ある。二人には特に行く当てがあるわけではないのだ。


「判った、じゃあトレオンに向かうか、レントに向かうかはどうする?」


 このまま東に南海道を進めばシャロン公国最大の港町レントに、北に進路を取るとポトアモス平原とパース平原を繋ぐトレオンに至る。


 キャラムやトレオンはまだヴォルフ=ロジック狼公のアゼリア州だがレントやトレオンの先はカール=クレイ公爵が治めるガーデニア州となる。州都は街道の要所エンセナーダだ。


 ガーデニア州には聖都騎士団や各州の騎士団が剣の修行に訪れるマゼランがある。エンセナーダやレントのさらに東に位置するディアック山の麓の街だ。


「とりあえず目的地は修行の地マゼラン、そこに至る道はいくつかあるけどトレオンからエンセナーダを経て、ということで行こうか。」


 ロックの提案に誰も異議はなかった。


「でも、ミロはいつまで付いてくるつもりなんだ?」


「邪魔?」


「そうは言わないけど、俺たちと居ると危ない目にあうこともあるだろうから。」


「ロックが守ってあげればいいじゃないか。」


「そうは言うけど、四六時中見張っている訳にもいかないだろう。」


 ロックの心配は当然だった。終焉の地に目を付けられているのだ、ロックたちも気が抜けない。ただ、ルークを狙った件はもう解決したようなので、あとはただルシア=ミストの私怨が気がかりだった。

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