第49話 東へ③
田舎の街だ、夜は明かりすらない。住人は寝静まっているので物音はしない。虫の声、小川のせせらぎ、雑草を揺らす風の音。
そんな中で異音に気が付いたのはルークの眠りが常に浅かったからかも知れない。ルークは目をこすりながら身体を起こした。
最初は聞き間違いや気のせいだと思った。だが確かに何か聞こえる。間違いではなかった。ただ何の音かが判らない。
「ロック、ねぇロック、起きてよ。」
ロックはルークに揺り起こされた。時間は判らなかったが真夜中だ。
「なんだよルーク、寝てたんじゃないのか。」
「なんか外で変な音がするんだよ。」
「またか。誰かが俺たちを捕まえに来たのか。」
ロスの宿でも夜中に起こされた経験がある。
「違う。そんなんじゃないよ。もっと、こう、ああ、聞いてみてよ。」
ロックは仕方なしに外に聞き耳を立てた。最初は特に何も聞こえなかったが、慣れてくると小さいが確実に誰かの声が聞こえる。よく聞けば女性の声のようだが何を話しているのかは判らなかった。
「誰だろう?」
「判らないけどさっきからずっと何かを話し続けているみたいなんだ。」
「ずっと聞いてたのか?」
「目が覚めたらなんか聞こえてきて気になったから。でも言っていることは判らないし、ずっと聞こえてるんだよ。」
「ジェイ、起きてるか。」
ロックはジェイを呼んだ。
「出番だぞ、外を見てきてくれないか。」
(なんで我がそのような使い走りみたいなことを)
「いや、使い魔だろうに。」
(それはそうではあるがお主の使い魔ではないわ。我は偉大なるギザイア=メイスンの縁者ステファニー様の使い魔である。まあ、仕方ない奴らじゃ、その頼み聞いてやろうかの。我が居ないと何もできんのか。)
ジェイは急に起こされて不機嫌ではあったが外に出るためにすぐ姿を消した。
しばらくしてジェイが戻って来た。
「どうだった?」
(それは、その、何というかだな。)
「なんだよ、歯切れが悪いな。外に何を見たんだ?」
ジェイは俯いて話し難そうにしている。
「誰がいたの?」
(外には若い女性が一人。一人と言っていいものかどうか。)
「どういう意味だ?」
(話すより見てもらった方が早い。二人とも出るがが良いわ。)
ジェイに促されて二人は外に出た。廊下には確かに若い女性がしゃがんでいる。その姿勢で何かを話しているのだが、独り言で相手はいない。内容は上手く聞き取れなかった。
そして、何よりその女性は少し透けていた。
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