第48話 東へ②
本来急ぐ事はない旅路だったが、ルシアを追う、という目的が出来たので徒歩ではなく馬を調達した。次の宿場町までは急げば1日だ。キャラムにはサミア海沿いを走る南海道を十日ほどで付ける筈だった。
キャラムは街道沿いの大きな街だった。アゼリア州には属していたがロス同様独立心の高い住民が多く港街でもあるのでロスとは似ている。ただシャロン公国最南端の港街ロスとガーデニア州の州都でもありシャロン公国最大の港レントとの中間地なので少し小さ目の船が立ち寄る港、という立場でしか無かった。
二人は南街道を順調に進んでいた。前後に旅をするキャバンなどは見れなかった。ロスからの隊商は全く出ていなかったし、ロスの惨状が知らされているのでキャラムからの隊商も絶えていた所為だ。
先行しているルシア達にも追いつけてはいない。
「急いでも仕方ない、なるようになるさ。」
とロックが言うのでルークも納得して従っていた。特に急ぎもせず、特にのんびりともしない、という感じだ。
「そろそろ街に着きそうだ。今日はちゃんと宿が取れるな。」
「野宿は嫌じゃないけど、ちゃんとした寝床はありがたいね。」
(それとちゃんとした食事がな。)
「えっ、ジェイも食べるの?」
(我をなんだと思っておるのだ、普通に飲み食いするぞ。)
「いや、食事しているところなんて見たことないよ。」
「そういや、見てないな。何を食べるんだ?」
(お前たちと何も変わらん。変な虫とかを食べるとでも思っておったのか。)
「いや、そもそも食べると思ってなかったんだよ。精霊の類なら食事なんてしないもんかと。」
(我は精霊の類などではない。ただの魔道師だ。)
「ま、魔道師?動物にも魔道師が居るんだ。」
(まあ珍しくはあるがな。だからちゃんと実体が在る。食事もできる。)
「なるほどね、それは知らなかった。世の中にはまだまだ知らないことが沢山ありそうだ。」
「それを経験することが修行なんじゃないか。一つ利口になったな。」
「ロックも知らなかったくせに。」
「いや、俺はだな、もちろん知って、」
「知って?」
「なかった。」
二人と一匹は最初の街で宿を見つけて早々に食事を済ませ身体を休める為に早めに床につくのだった。
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