第5章 南海道
第47話 東へ①
レイラを説得するのは骨が折れる作業だった。ただ、ロックもルークも折れる訳にも行かなかった。二人に付いてくることは今後も様々な危険に晒されることと同義だからだ。
幸いヴェルナー=フランクが合流してきた。
「レイラ様、ここまでにしてくださいませ。」
ヴェルナーの言葉は兄シオンの言葉に等しい。ある程度は自由に振舞っていても真剣なヴェルナーの意見は聞かざるをえなかった。フローリアも安心したようだ。
「じゃ、ヴェルナー、お姫様の御守は頼んだぞ。」
「何よ、その言い方は。ロックこそルークと二人で大丈夫?やっぱり付いて行ってあげようか?」
「レイラ様、勘弁してください。」
「もう、判ったわよ。ラースに帰るわ。でも、ヴェルナー、戻ったらお父様とシオン兄さまに起こられないように、いい訳を考えてよね。」
「判りました、ヴェルナーにお任せください。」
こうしてレイラ、フローリアとヴェルナーの一行はガリア州都ラースに向けて出発して行った。
「行ったね。」
「やっとな。よし、これからどうしようか。」
「東に向かうんじゃなかった?」
「そうだな。海路ならサミア海を東へ、陸路なら南街道をキャラムに向かう、そのどちらかだな。」
「海路なら船を探さないとね。でも今のロスは壊滅状態だから無理なんじゃないかな。ギャロに頼む、とか。」
「あいつなら手配してくれそうだけど、今は忙しいだろうし、こっちは丸投げで出て行こうとしている身だからな。でも今更だがシプレック将軍も息子にギャロと名付けるなんてよほどギャロウに思い入れがあるみたいだ。」
「ギャロは海、ギャロウは海の男って意味だっけ。」
「大体そんな感じだ。シプレック将軍にはお会いしたことはないけど、実直で優秀な武人だと父が言っていた。但し、公弟が相手となると、どうだろう。ギャロは信用できるけどな。」
「ギャロに迷惑はかけられないとしたら陸路ってことでいい?」
(ようやく決まったようだな。)
「なんだよ今までどこに行っていたんだ?」
全く絡んでこなかったブラウン=ジェンキンが出てきた。
(我はちと忙しくしておったのだ。あのキスエル老師と話をしておった。)
「老師と?何を話していたんだ?」
(決まておるだろう、ルシアとかいう奴の居場所のことだ。)
「おお、それで老師は何と?」
(老師が言うには、その者はロスには居ない、とのことだった。陸路で東に向かったと。)
「そうか、ちょうど俺たちも陸路で東へ、と決めたところだ。やつらは先行して待ち伏せでもするつもりかも知れないな。」
「待ち伏せされていると判っていて東へ向かうの?」
「当り前だろ。」
「だと思った。」
(では、東へと向かうことにしようか。)
「なんでジェイが仕切ってるんだよ。」
二人と一匹は自らを待ち伏せているかも知れない一行を追って陸路キャラムへと旅立つのだった。
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