第45話 捜索⑤
「それで、どうするんだ?」
「証拠がなかなか見つかりません。証言を得られるのが一番なのですが。」
「証言か。終焉の地の構成員の誰かを捕まえて証言をしてもらうかな。」
「終焉の地ですって?もしかして闇ギルドの?」
「そう。俺たちはその幹部だというルシア=ミストという男に会った。ルークの命を狙っているんじゃないかと思う。」
「ルークさんの?なるほどヴォルフ公のご養子であるルークさんは、それなりに狙われる立場にある、ということですね。」
「話が速いな。多分間違いない。あいつを捕まえて吐かせよう。」
ロックは自信満々だった。ただ、ルシアも腕も侮れない。用心するに越したことはない。それにしてもギャロは若いが洞察も深い。シプレック将軍のいい跡取りになりそうだった。
「じゃあ、一旦グレデス教会に戻ってみるか。」
本当はレイラとフローリアは港湾局に居てほしかったのだが、ダンテ代理が信用できなかったので置いて行くのも危険な気がした。少なくともロックやルークが傍にいた方が守りやすいだろう、ということで五人で教会に向かうことになった。
教会は静かだった。犇めき合っていた信者たちも居なくなっていた。
五人が教会に入るとサマム大司教が出迎えた。
「みなさん、どこに居られたのですか。幸い騒ぎは収まってきましたが、まだまだ安心できません。どうかここに留まっていただきたい。皆さんの安全は私が保証いたしますから。」
ルシアから話を聴いていないのだろうか。結託して亡き者にしようとしていたことがバレているとは思っていないようだった。サマムと終焉の地の関係が上手く行っていないのかも知れない。ルシアが一方的にナミヤ教を利用しようとしているだけ、ということか。
「大司教、街はキスエル老師のお陰で平穏を取り戻していますから大丈夫ですよ。」
「キスエル老師?」
「ええ、ここの地下にお住いのキスエル老師です。」
「ここの地下に?このグレデス教会の地下に老師がいらっしゃると言うのか?そもそも教会に地下があるとは聞いたことが無いし見たこともないぞ。儂をからかっておるのか?」
サマム大司教は途中から口調が変わってきていた。本性を隠せなくなっているのだ。
「ご存知なかったみたいですね。レフ=シャイロック教皇はご存知とのことでしたが。」
「兄が?忌々しい、いつもいつも儂のことをバカにして儂には何も知らせずに事を運ぶ。いつもいつもだ。何故だ。兄は儂を何だと思っておるのだ。」
大司教は自分の思考の世界に入ってしまったようだ。頭の中で考えていることを大声で叫んでいる、というのに気が付いていない。ルークたちがそこにいることも気にしていない。
「どこだ。地下はどこにあるのだ。案内せい。」
「いや、大司教、そう言われましても僕たちも場所は知りません。老師は突然現れて突然戻って行かれましたから。」
サマム大司教は何かぶつぶつと独り言を言い始めたが、その内容は聞き取れなかった。少し精神に変調を起こし出しているかのようだった。
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