第44話 捜索④
「判りました、とりあえず今判っていること
をまとめてお話ししますね。」
下等港湾局員であるギャロ=シプレックの
話は簡潔で判りやすかった。既に自分なりに
まとめていたかのようだ。
疫病が流行り出したのは約1か月前だった。
街はずれの貧民街でバタバタと人が倒れだし
た。そして、その処理をしていた港湾局の局
員や医療関係者が倒れた。あとは街全体に広
がるのに時間はかからなかった。病院で早く
に蔓延してしまったので、誰も治療を受けら
れなかったのだ。
港湾局と病院に真っ先に蔓延してしまった
ことで、ロスの街は混乱を極めたのだった。
そして街の有力者の中で疫病の被害を免れ
ていたのがナミヤ教関係者だった。ギャロの
意見というか感覚ではナミヤ教徒だけ病気に
罹らないようだった。少し不審に思ってすで
にギャロは調査を行いつつあったらしい。
それによると、やはりナミヤ教徒はほとん
どが疫病に罹っていなかった。家族が先に罹
ってしまって本人も罹患した場合を除くと皆
無だったのだ。
そこまで話を聞いて皆は確信した。元凶は
ナミヤ教会であり、その中心は「終焉の地」
で間違いない。
「でも、そこまで調べていて君はなぜダンテ
局長代理にその話をしていないんだ?」
当然の問いだった。下等局員なら局長に、
局長が既に亡くなっていたのなら代理のダン
テに報告するべきだろう。
「いえ、それはできません。ダンテ局長代理
はナミヤ教の幹部でもあるのです。」
「なるほど、それで局長が早々と死んでしま
っているのにダンテ代理は黒死病から逃れら
れたのか。グルということかも知れないな。」
「あなたたちが来てくださってよかったです。
僕一人で納められる話ではなかったので父を
呼ぼうと思っていたところでした。」
「父?」
「ええ、僕の父はフィル=シプレックと言っ
てギャロウの長官をやっているのです。」
「シプレック将軍か。」
「ロック、もギャロウっていうのは?」
「シャロン公国海軍の名称だよ。シャロンの
海軍全軍を総督しているのがシプレック将軍
という訳だ。」
「そうなんです。実は僕は父の命でロスの港
湾局に内定に来ていたのです。色々と悪い噂
が絶えませんでしたから。」
「悪い噂?」
「ええ、港湾局とナミヤ教徒が組んでロスを
思うがままに牛耳っている、という噂です。
商船から不当に税を徴収したり、とかの。そ
れで僕が派遣されたのですが、なかなか尻尾
を掴めなくて、そのうちにこの騒ぎでしたの
で本当に困っていたところだったので助かり
ました。」
ロックたちの知らない所で様々にな思惑が
ロスの街に渦巻いていたのだった。
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