第39話 ナミヤ教グレデス教会⑦

(お前たちは何者だ?)


 頭に直接その思考が流れ込んできた。ジェ

イとの会話と同じだ。


「あなたこそ、誰ですか?」


(ほほう、儂に問うのか。ちょっと待て、そ

このお前、もしかしたらどーぱの弟子ではな

いか?)


「はい、そうです、ほとんど何も教えていた

だきませんでしたが、一時期老師の元にお世

話になっていました。その前はラグでクロー

ク老師に基本を教えていただきました。」


(クロークとな。それではあ奴も健在なのだ

な。よいよい、皆壮健であればよい。)


「あなたは、ドーバ老師たちのお知合いです

か?」


(まあ、知り合いと言えば知り合いではある。

特にドーバとはオーガ老師の元で修業をした

仲間だ。クロークは、まあ、不肖の弟子、と

言ったところか。)


「クローク老師の師匠でしたか。でも確かク

ローク老師はドーバ老師のことを師匠と言っ

ておられたと記憶していますが。」


(あ奴、そんなことを。あれほど儂が世話を

してやったことを忘れておるのか。今度会っ

たらまた指導してやらんといかんな。)


 膨大な魔道力はドーバの師匠と言っても嘘

には聞こえないほどだ。いずれにしても敵か

どうかが一番の問題だった。


「それで老師はここで何を?」


(儂か。儂はロスが大変な厄災に見舞われて

いることを知って出張ってきたのだ。普段は

眠っておって世事には関わらないようにして

おるのだが、どうもその域を超えているよう

だったのでな。)


「すると老師がこの疫病をなんとかしていた

だけるのですか。」


(まあ、任せておれ。とょっと街中を回って

きてやる。少し話もあるので、ここで待って

おれ。)


 そういうと名乗りもしなかった魔道士は一

瞬で消えてしまった。


「なんだったんだ、ルーク、知り合いか?」


 老師との会話はルークにしか聞こえていな

かったようだ。


「いや、知り合いの知り合い、かな。ロック

も会ったことあるドーバ老師と一緒に修行し

ていたらしい。それで、ロスの疫病をなんと

かしてくれるみたい。」


「よかったじゃないか。それは助かる。でも

信用できるのか?」


「とんでもない魔道力だったから、信用しな

いと敵対なんてしたら僕たちでは到底太刀打

ちできないよ。」


(行ったか?)


「ジェイ、どこ行ってたんだよ。」


(あの者の力が凄まじかったので、少し外し

ておった。なんだあの者は、人間としてはと

んでもないぞ。)


「そうだね。ドーバ老師もすごかったが、あ

の人はもっと、かな。ドーバ老師と同じオー

ガの弟子って言ってたから、一体何歳なんだ

ろうね。」


 そこに先ほどの魔道士が戻って来た。


「さて、遠話ではまどろっこしい。普通に話

そう。街は疫病が蔓延しておったが、儂が全

部治してきてやった。水が原因だったので、

とりあえずは一度煮沸してから使えと指示し

ておいた。あとはネズミの駆除だな。ネズミ

が疫病を媒介している。おい、そこに隠れて

おるやつ、お前もネズミではないのか?」


(わっ、我は誇り高き猛禽類の王なり。決し

て下劣な齧歯類ではない。)


「そうか、それはすまなんだな。それでだ。

少し事情を聴こうか。」


 少し宙に浮いた状態で魔道士が見下ろしな

がら言った。

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