そらぷろじぇくと。そのに

「具体的な方法は?」

「あれから色々と考えてはみたのですが、全然……」


 星夜には観察力がある。ただし、それだけではプロセスを組むことはできない。朝倉と同じ年の程と言えど中学一年生程度であるため、知識や知能が未発達であったとしても仕方が無い。自身の計画力の無さに虚しさを覚えている彼に対して「それが普通だよ」と朝倉は優しく慰める。


「私にいい考えがあるよ。ただ、それを行うには人数と覚悟が必要かな」


 朝倉という科学者の脳内には既に、プランニングされた計画案がはっきりと浮かび上がっていた。ただし、これが成功するのかも分からない。しかしそれ相応のリターンがある。大人達に、再び少年あるいは少女時代の子供心を思い出させ、黒ずんだ心を少しでも昇華やもしれない。当たり前になり過ぎて認識出来なくなったものを、改めて見る習慣が作れたならば尚良しだと真剣に考えていたのだ。


「みんなが空を見て、みんなが笑顔……」

「楽しそうだねぇ」


 朝倉の考えにまで至れない星夜は、脳天気に考えていた。目的はただ一つ、青空を見せたいという真っ直ぐな思いだけで臨むつもりのようだ。『覚悟』という単語を聞き逃しているとも取れるが……。


「それで……人員はどうしようかねぇ」

「んーっと、ベガさんとルイさんとか……ですかね」


 この二人は朝倉研究所と縁がある。出会いは僅か一年前であるが、幾多の困難を共に乗り越えた言わば戦友だ。彼らが居れば、今回の実験は極めて円滑に進むだろうと朝倉も感じていた。


「ほほう、良い選出だ。では早速連絡してみよう……と言いたいところだが」

「ほえ? 何かもんだいがあるのですか?」

「いや、そうではなくてね。今回は君が発案した計画な訳だろう。君が連絡したらどうだい?」

「えっ……」


 少しだけ時間が止まった。星夜は朝倉の顔を見たまま硬直してしまった。目に光が見えない。


 しばらくして、ようやっと呼吸を取り戻したかと思えば……。


「んえぇぇぇぇぇぇーー!」


 泣き出してしまった。星夜はそれだけ、電話が嫌いなのだった。

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