スローターハウス

  すべては、あっという間だった。同じ、ゼロイチ教団の鉄の巨人でも、旧式の一人で操縦する<ヘッドオフHead off>と<インビンシブル・ネルソン>とでは、俊敏さ、パワーすべてが、違った。

 五対一の変則デスマッチの筈が、あっという間に、五体の<ヘッドオフHead off>の屠殺場とさつばと変わった。

 戦ったのは、五体のうち、三体だけで、二体の<ヘッドオフHead off>は、三体が、次々と引きちぎられるのを見ると、恥も外聞もなく逃げた。

 ゼロイチ教の信者であろうとも、恐怖には勝てなかった。

 その二体をキョンが許すわけがなかった。

「追いかけろ、ハウンド、くびり殺すのだ」

 スミスは、命じられるままに<インビシブル・ネルソン>をあやつり追いかけたが、それは、戦いではなかった。

 キョンは、背を見せる、<ヘッドオフHead off>に対し両腕の巨大な、分子間力破砕弾をわざと、逃げる<ヘッドオフHead off>の足に炸裂させ、転ばせると、<インビンシブル・ネルソン>は<ヘッドオフHead off>に馬乗りになるや、無残に、手足や各、パーツを引きちぎっていった。

 キョンは、狂っているとしか、言いようがなかった。

 <ヘッドオフHead off>のゼロゼロ式脱出装置で、コックピットは打ち出されたが、キョンは、わざと、それを、片手で柄んだ。

 そして、先に逃げる、もう一体の<ヘッドオフHead off>をも同じように追いかけ、今度は、意図的に、コックピットのある付近を殴りつけ、脱出装置を破壊し脱出できないようにすると、そこを、ゆっくりと、掴んだままのもう一体のコックピットでグリグリと油圧の力を利用し、おし潰した。

 最初に、<ヘッドオフHead off>のパーツが壊れていくのはわかったが、人がその後ゆっくりと、潰されていくのも、悲鳴とともに確かだった。

 人じゃない、この女は。スミスは思った。

 もう、スミスは、<インビンシブル・ネルソン>を動かしていなかったが、キョンは違った。三百六十度回転する腰を回し、まず、ヒーザンズの<ドワーフdwarf>を次々と破壊した。


 そして、ヒーザンズの兵士たちは、武器を捨て、抵抗をやめ、両手を上げ命乞いをしだした。

 しかし、キョンは、捕虜を取らなかった。捕虜収容所を持ち合わせていないからだろうか、それとも、殺すことを楽しんでいるのだろうか、、。

 ここからのほうがすべて、酷かった。無抵抗なヒーザンズの兵士たちを次々と腕でなぎ払い、殺していった。

 <ネルソン>の両腕は、ガンシップの燃え盛る炎によって、赤く染め上がっているのではなく、ヒーザンズの人間の血で赤く染め上がっていた。真っ赤だった。

 <インビンシブル・ネルソン>を精工に組み上げ、整備した、<スクリューボール>のフィネガンも自身が整備した<ネルソン>によって、殺された。

はたして本望なのだろうか?。

 

 ヒーザンズの中規模の地下抵抗基地は、壊滅し、沈黙した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る