インビンシブル・ネルソン
14 インビンシブル・ネルソン
それこそ、ネコのように弾を避けてジグザグに走るキョンのあとを追うのは、大変だった。
スミスは最後に食事を取ったのがいつか覚えてないくらいだ。
どうやって覚えたのか、わからないが、キョンは、一つのヒーザンズの地下壕につながる穴に飛び込むと、そのまま、地下壕を走り続けた。
まるで、迷路、ダンジョンだった。キョンの動物的な感で、一つの目的地に二人は向かっていた。
そして、地下はどこもかしこも、ひどく、きたなく、不衛生で、臭かった。
どこをどう走って、どういう経路を
そこは、
スミスは、両手を膝について、息をゼーゼーついていた。
「見ろ、もう犬にならなくて、済むぞ」
キョンの声だ。声に促されて、顔を上げて、驚いた。
そこには、教団の鉄の巨人が居た、しかも、頭がちゃんとある、首がある。
「なんだ、これは?」
スミスは、驚いて訊いた。
「鹵獲したんだろう。ヒーザンズが」
「頭があるじゃないか」
「教団の新型だ。しかも二人乗りだ、片一方が動きを操って、もう一方が攻撃を担う。見ろ、両方の腕に武装までついている片腕に分子間力破砕弾4発、計八発だ」
となぜかほこらしげなキョン。
「これにも、数日追いかけられたのか?」
「いや、これに追いかけられているネコどもをニュー・カタロニアの街のビルもてっぺんから眺めていたのだ」
「おまえだって、十分臆病者じゃないか」
「なんで、ネコのために無駄な危険を侵さないといけない」
新型の頭つきの巨人にはかかりつけで整備している老練な機械工の<スクリュー・ボール>のフィネガンがいた。
当然、ゼロイチ教団の襲来を受けていることは気づいていたが、<スクリュー・ボール>のフィネガンの仕事は整備だった。
<スクリュー・ボール>のフィネガンは、男とも、女とも例えられない野太い声を聞いた。
「腕の破砕弾は全弾装填されているのか?」
「あたりまえでさ、こいつの分子間力破砕弾は、ちょっとやそっとのものじゃないですぜ、多分、おれっちが造ったあの城壁でさえ一発で、、」
頭つきの巨人の腕が自分を抱きしめるようなポーズを取ってもう片一方の肩の上に乗っていた<スクリュー・ボール>のフィネガンを腕の破砕弾で狙っていた。
その女とも男とも例えられない野太い声は、続けて言った。
「妙な真似をせずに、とっととこの巨人の肩から降りろ、ジジィ」
フィネガンは、頭部のコックピットで腕を操作している女に気づいた。女の顔をあまりにも派手な入れ墨をしていた。左頬に太い丸、右頬に縦棒。額には、太い横一文字。その上の皮は剥がされたような酷い傷になっていた。
「てめーは、ニュー・デブロワで連れてこられた、脱教者!」
「だったらどうだ、さっさと降りろ、このクソ・ジジイ」
「なにが、クソ・ジジイだ、クソ脱教者のクセに」
<スクリュー・ボール>のフィネガンは、渋々巨人につけてあった、整備用着脱式のキャットウォークに乗り移った。
「わしの、インビンシブル・ネルソンが、、」<スクリュー・ボール>のフィネガンはまだ、未練たらたらだ。
「心配するな、ネルソンは大事に使う、、、、」
「つもりだ」
とかなり間を開けて、ネルソンの頭部に搭乗しているキョン。
「前進だ、カンティ・ハウンド、イージー・ウォーキィーだ、そして、ナイス&スロー・ファッキングだ」
「俺は、鉄の巨人なんて、操縦したことない」
とエージェント・スミス。
「心配ないぞ、ハウンド、誰でも最初は最初だ」
「お前が操縦に変われ、操縦の経験があるんだろう」
「私は、攻撃のほうが、性格上向いている。お前は、そこのディック(ちんちん)に収まっていろ、丁度性別も合致している」
ネルソン、頭のある巨人でも、操縦は、股間のドラム缶で行い、攻撃だけが、頭部のコックピットだった。
インビンシブル・ネルソンは、ドカドカと盛大な音を立てて、地上への発進口へ向かっていった。
地上に出ると、頭上をゼロイチ教団のガンシップが、インビシブル・ネルソンの頭上を不気味な音を立てて掠めた。
「にやがっ!!」
キョンが、叫んで、インビンシブル・ネルソンの左手を振り上げた。
あまり、上手い、腕の操作だったとはいえないが、インビンシブル・ネルソンは、左手でフライ・バイするガンシップの後部垂直尾翼とスタビライザーを掴んだ。
「アチョーイヤーッ」
キョンの雄叫びのほうが、奇異だった。
インビンシブル・ネルソンは、ガンシップを遠心力を軽く付けて、振り回すと、手近なもう一機のガンシップに向けて、放り投げた。
超低空だったが、ガンシップとガンシップが衝突し、空中でドカンと嫌な音を立てて、二機団子になって、落下する最中に、二機が可燃物の燃料に引火して大爆発を起こした。
ガンシップからは、ゼロイチの降下猟兵、地上銃撃を担当する機付き搭乗員など、爆発で弾き飛ばされたり、キャビンからは、人が粉末のようにこぼれ落ちて、ガンシップは地上に落下して、もう一回、大爆発をおこした。
ガンシップの地上での燃えあがる炎で、インビンシブル・ネルソンは、赤く染まり赤く照らされ、悪魔か、鬼のように突っ立っていた。
地下のハンガーから地上に這いずり出た<スクリュー・ボール>のフィネガンは言った、。
「おれが、整備しただけは、ある、これぞ、まさしく、ザ・モスト・ファッキン・インビンシブル」
キョンも言った。
「ネルソン、ゴー、キョンこと、キョニアソンデリアさまのお通りだわさ!!、犬、前進だ」
インビンシブル・ネルソンは、五機の鉄の巨人に向かって、赤い灯り照りあげられて前進していった。
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