食欲の秋がはじまる

 暑い夏の日もある、という記事を書いたのがつい最近のことのように思うが、もう今や秋は目前にある。天気予報を流し聞いていると、明日の気温はちょうど六月末頃とおなじくらいだそうだ。ということはつまり夏は二ヶ月しかない。この短い夏の間に広大な畑で育てられた野菜がスーパーでは豊富に並ぶ。直売所でのめまいがするほど安いそれに助けられるように、食卓は野菜ばかりだ。ここらあたりでは初物のとうきびがようやく食べられるようになった。子どものころ、北海道の朝もぎゆでとうきびしか食べない、という贅沢をしていたことを思い出す。それ以外はお断りしていた。あの甘さが忘れられなかった。そして今、現地にて食べ放題にも近い生活をしている。とうきび街道にあるのは、その、朝もぎゆでたてのみなのだ。今日も一本食べさせてもらって、さらに一本お持ち帰りした。一本食べるだけでなかなかの満腹感を味わえるので、朝食にもってこいなのだ。

 とうきびだけではない。玉ねぎが収穫期を迎えている。本州よりも二ヶ月ほど遅いだろうか。果てしない畑に植わる果てしない量の玉ねぎ。本当にこんなにも作って、みんな食べているのだろうかと思うことも一度や二度ではない。私の身長立方メートルくらいのコンテナが畑にいくつも点在し、もちろんその中身は玉ねぎでいっぱいだ。

 玉ねぎだけではない。初物サンマも鮮魚コーナーに並びだした。まだまだ値段は高いけれど、そのうちお手頃価格になってくれるだろう。サンマの刺身というものはこちらに来て初めて食べたのだけれど、あの脂ののりったらたまらないのである。

 サンマだけではない。新じゃがも直売所に登場し始めている。年を越したジャガイモの方が甘くておいしいというのがもっぱらの印象であるのだが、今年は不思議なことに新じゃがからおいしい。なぜだろうか。しかしおいしいことは嬉しいことなので、例年より早くイモにまみれた食生活が始まりそうである。

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