風が吹けば届かない
朝起きるとまずテレビをつける。重要なのは時間で、だいたいどのニュース番組でも「六時のニュースです」とか宣言してくれるので助かっている。その声を聞きながら朝のスケジュールをこなしていくのだけれど、今日はテレビをつけたとたん、「このチャンネルは登録されていません」と表示された。昨日まではたしかに映っていたのに、だ。まあしかし私にとってはいつものことであるし、時間さえわかればなんだっていいので、映る番組へチャンネルを変えていく。森の向こう側に電波塔があり、どうやら木々に遮られて届きにくいことがあるらしい。今日みたいに風の強い日はとくにそうだった。
一昨年の冬のある日。当時住んでいた家では映るチャンネルは四つだけで、それはそれで毎週楽しみにしている番組なんかがあった。一昨年は毎週末が暴風雪でたいへんな年だったが、その日もそんな風に大荒れの天気だった。家から出られないものだから暇つぶしにテレビをつけたわけだが、どのチャンネルも映らない。きっと風が強くって電波が届いていないのだと思い、そのまま暇をもてあました二日を過ごしていた。そうして晴れ渡った週明け、テレビをつけるがやはり映らない。ここでもしや、とある考えに至った私は設定から受信できるチャンネルの再検索を試みる。やっぱりそうだ。アンテナの向きが吹雪で変わってしまったのか、以前映っていたものが映らず、以前映らなかったものが映るようになっていた。少なからず楽しみにしていた番組が見られなくなったということだ。この素っ頓狂なできごとにショックを受けつつも、まあいいやと気持ちを切り替えて新しいチャンネルと仲良くすることにする。しかしその後あっけなくも重要な線が切れてしまい、風なんて関係なく地上波が見られない生活が今の家に引っ越すまで続いたのだった。
今あの家に住んでいる人のチャンネルはどうなっているのだろう。地域のお便りを配るたびに想いを馳せる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます