花開く黄色

 うだる日々が続いたのも十日ほどだろうか。こんなにも続くのは二十年ぶりらしい。そうしてやっと涼しくなったのが二、三日前。最高気温は二十度前後をうろうろし、日が落ちて夜になれば十二度なんてそれまでとの差が激しすぎる。半袖ばかり積み上がったところから一枚抜いて仕事へ行ったけれど、あんまりにも寒くって次の日からは上着をはおるか長袖で出勤することになった。空は晴れていても流れる風は冷たい。まだあと何度か夏はやってくるだろうけど、ようやく落ち着いた気温になって安心する。

 そんなこともあって、私の草刈りから逃れて庭に生えている宵待草を観察することにした。仕事から帰ると、花が開きそうなつぼみがあるのを確認しておく。そうして夜六時頃、ご飯支度をすませてから外に出た。寒い。ぴらぴらした簡易タイパンツとシャツではあまり長居できない予感がする。靴下にショートレインブーツだから、足下がこそばゆくなることはないけれど、それよりなにより寒さに負けそうだ。玄関を出てすぐに後悔したけれど、まださらに残念なことがあった。目星をつけていた宵待草の花がすべて咲いてしまっていたのだ。もっと早い時間でないとだめだったようだ。翌日リベンジすることにしてすぐ室内に戻り、カレーを食べた。

 次の日、六時でだめならばと五時頃外へ出る。まだまだ空は明るい。二十度近くあったので、先日と同じ格好でも寒さは感じられなかった。

 宵待草はひょろりと背が高く、花弁を四枚持つ黄色い花が、下から順番に毎夜咲いていく。萼も四つ。じーっと見つめていると、まずはその萼に割れ目が入る。花弁が膨らみ、弾けるように。そして今度は四つの萼が順番にぱたん、ぱたんと反り返って折れ、四枚の花弁が準ずるように、ぱた、ぱた、と開いていく。こうして二十分ほど待てばどれかがぱた、ぱた、と開いてくれるのでおもしろい。本州にいたときにも見ていたけれど、幾夏を経ても楽しいものである。

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