おさんぽ
ちょっとばかし隣のお家に届け物があったので、普段は車なのだけれどなんとなく歩いて行ってみることにした。雨の予感が匂う夕方。風は少し湿り気を帯びていながらも、半袖でちょうどいい心地よさがある。ショートレインブーツを履いて、イチゴさんの様子を横目に歩き出した。
森の奥で鳥がしきりに鳴いている。かと思えばすぐ近くから急に飛び立っていく。そういえば庭に住んでいるようだった一羽のセグロセキレイを最近見かけない。ここにこだわらずとも餌が手に入るようになったからだろうか。忘れていたくせに、ちょっとさみしくなった。
お隣さんと私の家と、そのちょうど真ん中ぐらい。道の中央に虫が集まっている。ハエとかアリとか、あとはよくわからないけれど光沢のある甲虫。なにに集まっているのかとちら、と覗き見ると、もうすっかり原型を失ってしまっている(おそらく)ネズミの死骸だった。その場はとりあえず通り過ぎて、先に用事を済ませてしまう。玄関の横、窓の下には同じようにプランターが置いてあった。きっとあれはズッキーニだ。今年の野菜がいろいろうまくいったなら、私も来年は植えてみよう。
そうして帰り道、私も虫と一緒になって道路の真ん中にしゃがみこんだ。もはや残骸といっても差し支えないだろう。ヒゲの辺りと、なんとなく苦そうな部位だけを残してほとんどきれいさっぱりとしていた。ヒゲを見留めて、そうしてやっとネズミだろうと判断できたぐらいだ。アリの行列は解散していた。森の掃除屋さんたち、お疲れさまです。
みゃーこが窓際に座って私の帰りを待っているようなのが遠くに見えたので、観察はそれぐらいにして帰ることにする。
ついこのあいだ、市の草刈り機が刈っていった道路縁もずいぶん雑草がのびている。手のひらみたいな形をした大きな葉っぱの上を、小さな小さな黒い点が横切っていった。そよ、と吹いた風は森を通って音が大きくなる。ぽつ、ぽつ、と雨が降り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます