第七章 精神魔法ミミペロペーロ
20:極めて王道なシチュからのえっち展開
俺が転生して、二週間が経過した。
本日最初の仕事は、“魔王コース”だ。
黒マントを羽織って玉座に座り、やってきた勇者に倒される魔王を演じる。
というのが、今回客が希望してきたシチュエーション。
マニアックなプレイばかりしていると、こういう王道的な役目を与えられることに安心してしまう。
もっとも、その後にマニアックなプレイが待っていないとも限らないんだけどね。
そんなわけで、少し硬めの玉座に座り、腕を組んで待つこと一分程度。
「はぁーっ!」
雄叫びをあげながら、一人の勇者が部屋にやってきた。
「赤いマントをなびかせて! 今日も現る伝説の戦士! 超時空勇者フラン参上です!」
ビシッ、とポーズを決めたのは女神様だった。
目だけ覆う白いハーフマスクをつけているけれど、どう見ても女神様だった。
「女神様、なにをしているんです?」
「め、女神? なんのことですか? そんな美少女知りません」
「目だけを隠して正体がバレずに済むのって、二次元の世界くらいですよ、女神フラン様」
「ですから、そんなナイスバディで完璧すぎる美女のことなんて知りませんっ!」
俺も知らないわ。
なにさりげなくナイスバディなんて言っちゃってるんだ。
貧乳のくせに。
あ、女神様に対する貧乳は褒め言葉ね?
「胸の大きい女神様は女神様じゃないし、むしろセクシーさと胸の大きさは関係ないっていうか。あ、でも女神様はセクシーってタイプでもないか」
「考えが声に出てます」
「おおっと」
慌てて口をおさえる。
「失礼な人ですね」
「女神フランじゃなくて勇者フランなんですよね? ならフラン様のことをどう言おうが、関係ないじゃないですか」
「うぐっ」
女神様が悔しそうに唇を噛んだ。
「なんにせよ、女性の前で胸の話をするのはセクハラですっ!」
そして、人さし指を突きつけてきた。
「それで、女神様はこんなところでなにをしてるんです? 俺が稼いだ金を俺に投資するの、やめてくれませんか?」
なんか無意味なことをしているような気になってくる。
「投資じゃないです。お金はお店に払っているんです」
「女神様ならこんなことしなくても、いつでも部屋でプレイしますよ」
「だから女神様じゃないです。一度、勇者ごっこをしてみたかっただけです。えっちなこと、しなくていいです」
それはちょっと残念だけど、今回はかなり楽な仕事になりそうだ。
「それでは、入るところからやり直しますので、ちゃんと魔王役お願いしますね。ラスダンで迎える最終決戦のイメージです。リアルにやりたいので、しっかりやってくださいね」
女神様が部屋を出て行く。
こだわるなあ。
「魔王覚悟ォッ!」
女神様が入り直してきた。
セリフ変わってるじゃん。
まあ、のってあげよう。そんで、戦いの中ドサクサに紛れて、身体触ってやろう。
「ふははは! よく来たな勇者フラン!」
「死ね魔王トモマーサ! 行くぞ! うおおおおーーーー!」
女神様が背中の剣を引き抜き、突っ込んでくる。
俺の方も、魔剣と呼ばれるハリボテを用意しているのだ。こいつで剣を受け、チャンバラを適当に続ければ女神様も満足だろう。
で、隙を見て押し倒し――。
「ん?」
しかし、魔剣は抜けなかった。
「あ、あれっ……?」
かっこよく剣を抜刀しようと思ったのに、途中で鞘に引っかかって、うまく抜けなかった。
漫画とかアニメのキャラクターはさ、よく素早く抜けるよね。
「うおおおおお!」
やばい!
剣を振り上げている女神様がすぐ目の前に!
「ちょっ、ちょっと待っ」
仕方なく半分ほど鞘に収まったままの魔剣を掲げ、勇者の剣を受け止めた。
ぽこっ、というしょぼい音がなって、女神様が尻餅をついた。
「ひゃんっ」
小さい悲鳴。
勇者とはいえ女の子なので、女神様はミニスカートをはいている。
脚の間から、黒い下着が見えてしまっている。新しい下着かな?
男子の視線には敏感なんです!
とか言っていたくせに、どうやら見られたことに気づかなかったらしい。
そのまま立ち上がり、もう一回剣を振るう。
ぽこんっ。
魔剣の上から伝わる、軽い衝撃。
「えいっ、えいっ、えいっ」
ぽこぽこぽこんっ!
もう三回、女神様が振り上げた剣で叩いてくる。
可愛いなあ。
「はぁっはぁ……。な、なかなかやるじゃないですか……魔王トモマーサ」
と思ったら、もう息切れしている。
「もしかして女神様って、弱いんですか?」
この世界に来てからは、やたらと強すぎる女の子ばかり見てきたからなあ。
女神様も女神というくらいなんだし、当然強いものだと思っていた。でも、この間の休日デートの時はか弱い女の子って感じだったし。
けどさ。体力も力もない俺に防がれる攻撃なんて、相当の弱さだぞ。
俺が男で、女神様が女の子だという点を考慮しても、だ。
もちろん、この場合の女の子とは、この異世界のような女の子ではなく、地球の女の子の方をさしている。
「女神様じゃなくて、勇者ですっ!」
ゼイゼイ肩を上下させながら、女神様が怒る。
どうやら本当に腕力はないみたいだ。
俺の中にある悪戯心が顔を出した。
「くくく。勇者フランよ。その程度の力でこの私に刃向かおうなどと、笑わせてくれる」
俺は女神様の言いつけ通り魔王を演じ、剣を握る女神様の細ーい腕を掴んだ。
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