21:そこは、赤ちゃんのお部屋です……んっ、んうぅっ……はぁ、はぁ……やあぁんっ……


「あっ」


 突然の演技再開に驚いたのか、女神様が小さく悲鳴のような声を上げた。

 俺はそのまま女神様を引っ張り、ふらついた彼女の背後に回り込んだ。



「愚かな勇者には、バツを与えねばならんな」


 そうして、もう一方の手首もつかみ、動きを封じる。



「ちょっと、なんですか! 私が頼んだのは勇者に討伐される魔王です! こんな展開、私の脚本にはないです!」

「リアルに勇者対魔王の戦いを演じたいんだろう? それなら、途中にピンチな展開が入った方がいいに決まっている」

「……それも、そうですね」


 納得したらしい。

 というわけで、俺はそのまま女神様の後頭部に鼻を押し付けた。



「な、なにしてるんですかっ!」


 日頃いろいろされているからね。その仕返しだ。

 盗撮映像を目の前で見られるのはとっても恥ずかしいんだ。

 女神様にも、少しは恥ずかしい目にあってもらう!


「くんかくんか。すーはー」


 あ、すごいこれ。

 ただの石鹸の匂いなのに、鼻が快感で麻痺しそうなほどいい匂いに感じられる。

 おかしいな。同じシャンプーを使っているのに、どうして女の子ってこんないい匂いするんだろう。

 それに、サラサラな髪の感触が鼻に当たって、気持ちいい。



「くんくん。はぁっ、はぁ……」

「ちょっ、なんか攻撃の仕方が変態っぽいのですが」

「なにをいう。これぞ魔王の奥義、ゼロ距離クンカ・クンカーだ!」

「どんな奥義ですかっ!」


 女神様は、一応抵抗を試みてはいるらしい。

 両腕に力が込められているが、非力すぎて抑え込むのに苦労がいらない。


「どんな魔法にも、私は屈しません!」


 お、ノリ気だね。

 ということは、もうちょっと悪ふざけしてもOKっぽいね。



「相手を辱しめる精神魔法だ。そしてこれが、ミミペロペーロ!」


 次に、髪の隙間から見えている小さくて可愛いお耳を、 ぺろっとひと舐めしてみた。



「はぅあぁあぁーーっ!」



 女神様が震えた。

 おお?

 まさかの敏感ポイント?


「ふっふっふ。効いているようだな勇者よ」

「ま、まさか。き、効いてませんけど?」

「ほう。ならば、そーれ、もうひとペロペーロ」


 ぺろっ。


「んぁっ」


 びびくんっ!

 女神様の身体が痙攣した。

 さらにもうひと舐め。


「ひゃぁんっ!」


 凄い!

 面白いほど喘いでくれる。

 まだまだやってやろう!

 高速舐め舐め、ぺろろろろんっ。



「やぁっ……らめぇっ……そん、なっ……! は、はげしく……ひゃぅっ……な、舐められたら……ぁんっ! んっ、んうぅっ……はぁ、はぁ……やあぁんっ……!」



 お尻を突き出して震えはじめたぞ!

 お尻が股間にこすれて、ちょっと気持ちいい。


「やめてというわりには、気持ちよさそうじゃないか。随分と甘い声で鳴く」

「いや、恥ずかしいです。声、聞かないで……」

「じゃあ、そのえっちな口を本気ちゅーで塞いじゃおうかな?」

「……ほ、本当にキスしたら、殴りますよ?」

「ふん。非力な勇者め。貴様に我を殴ることなど出来ん」


 そーれ、もうひと舐め。


「あっ……」


 おっと、腰が砕けてきたぞ。

 脇の下に手を滑り込ませ、立たせてあげないとね。



「くっ……変態魔王。お尻に、硬いものが当たっています……」

「当てて欲しいんだろう? それとも、こっちを攻めてほしいのかな?」


 脇に挟んでいた手を下ろし、女神様のお腹をさする。



「そ、そこは赤ちゃんのお部屋ですっ!」



 服をめくり、直にポカポカでプニプニのお腹をさすりながら、


「ちゅぱぁっ」

 耳たぶを吸ってみる。


「ひぅっ……! み、耳は、や、やめてください……」


 女神様が声を震わせる。

 さすがにまずい気がしてきた。

 でも、女神様ってば昨夜も俺の仕事ぶりを動画で眺め、爆笑していたんだよな。

 やっぱり、もうちょっとだけ辱めてやろう。


 ぺろっ、ぺろぺろっ、ちゅぱぱっ!

 今度は舐め舐めしまくってから、数秒だけ耳たぶを吸ってやった。



「ゃっ……んぁっ! ぁんっ! ぁっ……はあぁぁん……っ!」



 女神様はとびきり大きく喘ぐと、足腰の力を抜いて、ぺたんと女の子座りになってしまった。

 ……ふう。

 やりすぎたかな?

 手を解放してやると、



「うううっ」


 両手で顔を覆う。

 見ると、床の上に水たまりがじわじわと形成されていった。


「えっ、漏らしたの?」


 睨まれた。



「だから耳はやめてくださいって言ったじゃないですかーっ!」


 立ち上がり、再び剣を振り回す。



「いや、だって、いつも女神様だって俺に恥ずかしいことするじゃないですかっ! だからちょっとくらいならいいかなって! それに、女神様も結構ノリノリだったじゃないですか!」

「こんなのちょっとじゃないです! ノリノリでもないです! トモマサさんのばかーーーーっ!」


 ブンブンとがむしゃらに剣を振り回す女神様と、後ずさる俺。

 すると、女神様は自分のおしっこで足を滑らせてしまった。

 前のめりになり、とっさに伸ばしたのであろう手が、俺のズボンを掴み――。

 ずるり。ぼろろんっ。

 二人揃って転倒。


「いたた。もう、なんなんですか……」


 起き上がりかけた女神様の顔の前に、元気いっぱいのもう一つの魔剣が突きつけられた。



「なっ、ななっ……」

「ち、違う! 決して女神様の反応に興奮していたとか、そういうわけではっ!」

「こ、この変態大魔王ーっ!」


 勇者の剣の切っ先が、天井を向く。



「ま、待て! 待ってくれ! 誤解なんだ! 頼むからその剣を下ろし――」

「成敗ですっ! この乙女の敵!」


 本気の一振りが、魔剣に炸裂した。



「アーーーッ」




 俺の悲鳴が部屋に響き渡った。


「もうトモマサさんなんて知りませんっ!」


 股間をおさえてうずくまる俺を置いて、女神様が部屋を出て行った。

 調子にのるもんじゃないな、ほんと。



 ちなみに。

 晩御飯のおかずを全部あげると、女神様はあっさり許してくれたのだった。

 それもそれでどうなんだ。ちょろすぎて心配だ。



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