08:じゃあ今ココでおしっこして、綺麗かどうか証明してもらおうか



『そ、そそ、そうですね。そういう、設定ですよね』


 視線をそらしながら答えると、壁に叩きつけられた。

 身長、俺の方があるのに。

 そのまま、尻餅をつく動画の中の俺。

 それを見るのが辛くて、画面から目をそらす今の俺。

 その隣で、口元に手を当てて笑いをこらえている女神様。


「どっちが小鳥ちゃんだかわからないですね。ぷぷーっ」


 ここが頼れる人のいない異世界じゃなかったら、こんな女追い出してやるのに。



『わかってンならはよ襲えや! 今日は攻めより受けの気分なんだよ!』


 ドン!

 鳥娘が片足で、俺のすぐ横を蹴った。壁ドンだ。足バージョンの。


 動画ではわからないが、ここでスカートの中身が見えたんだ。パンツは穿いていた。黒くて、スジに食い込むほど布の面積の小さい、えっちぃやつ。普段の俺なら興奮しそうなところだが、いざ目にするとエグい。やっぱり、清楚な下着な一番っていうか。



『仕切り直しだ。次はちゃんと襲ってこいや』


 鳥娘が背中を向け、部屋の中央に戻ると再びしゃがみ込んだ。

 で、俺の方を向いて


『ひうぅ、誰か助けてください……』


 あざといボイスで言った。



 いやいやいやいや。

 なにその演技力。全然か弱くないし、襲っても返り討ちじゃん、俺。

 また怒られるのは嫌なので、仕方なく俺は襲ったさ。

 腰に下げていた偽物の剣を抜いてね。



『ま、ままま、魔物めぇ! せ、成敗っ!』

「成敗って! 時代劇かっての!」


 女神様が床を叩く。

 俺(動画)は、頭を抱え震えている鳥娘をバシバシ剣で叩く。


『ああんっ、やめて、んぁっ……ぁっ、あんっ……ひいぃ~~~~んっ!』


 あえぐ鳥娘(強キャラ)と、ひたすた叩いて突いて、また叩く俺(動画・無表情)。


 なにこれ。

 どんな状況なの?


 一時間ほど叩いてやると(十倍速で動画再生)、鳥娘は満足したらしい。



『へっ、やりゃぁ出来ンじゃねーか。次も指名してやんよ』


 ヨダレでぐちょぐちょの口元を拭いながら、満足げに部屋を出ていった。

 失禁したらしい。彼女の座っていたところに、黄色い液体が――ああもう、これ拭くのも俺なんだよ。

 その後は、惨めにも雑巾がけする俺が画面に写っていた。

 てゆーかさ、鳥っておしっこしないんじゃないの?



「女の子のおしっこはご褒美ですか?」

「そう思っていた時代もありました」

「今は違うんですか?」

「現実は、生暖かいのがキツイっす。あとちょっと、臭いが、ね?」

「そうですか。でも安心してください。私のは無臭で綺麗ですよ」

「…………」

「……突っ込んでくださいよ。なにスルー決めてるんですか。恥ずかしいじゃないですか」

「急にえっちなこと言い出したから、びっくりした」

「え、えっちじゃないです。ただの、ボケです」


 いや、十分えっち発言だったぞ。

 妄想の俺なら、


『じゃあ今ココでおしっこして、綺麗かどうか証明してもらおうか』

 って、意地悪な笑みを浮かべてるところだ。


『こ、ここでするんですか……?』

『当たり前だろ。目の前で出してもらわないと、女神様の聖水かどうかわかんねーしな?』

『ううっ、トモくんの意地悪ぅ……。でもそんなところが好き♡』


 それで、真っ赤になりながらおっしこをする女神様のソコに、顔を近づけて。


『へえ。こいつは確かに無味無臭だぜ』

 直接口をつけて飲んじゃうんだ。


『んじゃ、きちんとおしっこ出来たご褒美に、俺様のもやるぜ。浴びるほど飲みなァ』


 ぼろろん、じょばーっ。

 ってね!

 おしっこの飲ませっこ!

 こんなんされてもおかしくない発言だったぞ!

 実際には、しないけどね!

 女神様のおしっこなら綺麗そうだけど、言う勇気がない!

 女神様は咳払いですべった空気をごまかし、話を変えてきた。



「でもよかったじゃないですか。褒められましたよ」

「そうだね……」


 全然楽しくなかったけどね。

 全然えっちな気持ちになれなかったけどね。

 むしろビクビクだったからね。


 どのくらいの強さで叩けばいいかわかんなかったし。でも弱すぎてもダメなのかもだし、少しずつ力を強めていって、後半なんてほぼ全力で叩いていたのに、気持ちよさそうにあえぐばかりでダメージは与えていないみたいだったし。

 なにあのモンスター。怖っ!


「次も指名してくれるそうですね」

「そうだね……」

「初日にしてはよくやった方ですよ」

「ほんとにね。そう思うことにするよ」


 早くも、現実を知ってしまった俺だった。



 

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