07:鳥系の魔物娘はスカートがきわどすぎる



 猫耳筋肉女が去った後は、休憩室で少し休む。ソファに座っていると落ち着いてきて、するとなんだかムラムラしてきた。

 で、今度こそ濡れ濡れ体験してやろうと思い、受付に戻る。


『次は“冒険者コース”でーす。トモマサさんが冒険者になって、モンスター役のお客様を襲っちゃってください。本番はダメですよ。服の上からおさわりされるのがお望みらしいです』

『き、きき、キスはっ!』

『オーケーだそうでーす』


 にこにこ顔で言うルーシアさん。尻尾をふりふり、可愛いなあ。

 そういえば、ルーシアさんからはクッキーみたいな甘い匂いがした。やっぱり、あの猫耳女が普通じゃなかったんだ。


 オーケーというのは、してもいいけどいなくてもいいってことだろう。

 相手を見て、可愛い娘だったらしたろ。次のキスは気持ちいいかもしれないし。

 そう、この時の俺は思っていた。

 失敗した直後だったから。今度こそ満喫してやろうって、思っていた。



「そんなにキスがしたかったんですか?」

 と、女神様。


「まあ、したかったよね。ダメダメだったとはいえ、一回こなして少し落ち着いたっていうか、ね?」

「むっつりですね」

「否定はしないけど。一時間半の休憩を挟んだ後だったから、どうせならえっちなこと楽しんでやろうって、気になってきて……」

「強気になってきたんですね。……私の初めても奪っていることですし」


 最後の方はよく聞こえなかった。

 女神様、今なんて言ったの?

 まあいいや。



「それで、まあ……、調子に乗ってごめんなさいでしたっていうね?」

「えええ? またやらかしたんですか?」

「ほんと、産まれてきてゴメンなさい」

「ええー? なにがあったんですか?」

「できれば、そこには触れない方向で……」


 ほんと、自分の失敗シーンみせられるのって、きついんすよね。

 しかし女神様は動画を早送りにし、次のプレイルームに移動した俺を見始める。

 この鬼畜女神!


 今度は、俺が鎧を着込み、腰に剣をさげた冒険者スタイルだ。鎧と言っても、見た目は鉄の鎧っぽい感じなのに、実はすっごく軽いプラスチックみたいな素材。実際に戦うわけじゃないから、ハリボテでもいいのだ。



「似合ってないですねえ、鎧姿」



 うるせっ。

 部屋はまた凝っていた。

 地面とか壁とか、ゴツゴツした岩みたいな感じ。

 岩山で魔物に遭遇し、討伐に入る冒険者っていうシチュらしい。


 だが魔物が思いの外可愛かったので、冒険者は発情してしまい――という、エロ同人みたいな展開。

 魔物役の女の子はというと――。



「結構可愛いじゃないですか」

「まあ、ね……」


 両手が羽になっている、鳥娘だった。肩の辺りで切りそろえられたブラウンカラーもかわいい。胸は控えめで、原始時代を思わせる革の衣服をまとっている。スカートもボロ布みたいなやつだ。これ、もしかして穿いていないんじゃ……。

 なんて、この時点では興奮していた。


「念願のキスはしたんですか?」

「見てればわかるよ」


 見るなって言っても、どうせ見るんだろうし。

 もう好きにしやがれ。


「そうですね。倍速で見ちゃいましょう」


 この女ァ。

 俺(動画)が近づくと、鳥娘はびくりと肩を震わせて、しゃがみ込んだ。

 こっちもしゃがめば、スカートの中が見えそうだ。

 穿いているのか、穿いていないのか。

 ふひひ、確かめるチャ~ンス。


 中を覗こうとして、目が合った。

 涙で潤んだ瞳が揺れている。身長なんて、130くらいしかなくて(目測)、ああ、身体もちょっと震えている。


 あの時の俺は、急に胸の痛みを感じたんだ。

 これ、演技なんだよな?

 っていうか、本当に15歳以上なんだよね?

 襲われるっていう設定だから、震えているだけなんだよね?

 不安だけど、まずは頭を撫でてみようか。



 そんなことを考え、そっと手を伸ばし、


『ひぅっ。や、やめてください……』


 小さく、悲鳴をあげられた。

 女の子らしい、甘くてキュートな声だった。

 えええ。無理でしょこんなん。

 こんな時、妄想の俺なら彼女を優しく抱きしめるんだ。頭を撫でて、耳元で囁くの。



 ――君の笑顔がみたいな。だから、笑ってごらん?


 目元にそっと指をやって、涙を人さし指で拾うんだ。


 ――ほうら、落とし物だ。


 そう言うと、彼女は


 ――もう一つ、落としちゃいました。私の心を、あなたに。



 とかなんとか言ってね。

 そして俺は、未来のお嫁さんをキスで笑顔にさせるんだ。

 でも、彼女の希望は襲われることなんだよな。じゃあ、襲わないとなんだよな。

 頭に触れようとして、


『い、いや……』


 その手を払いのけられた。

 やっぱり無理っすよ。俺にはこんなか弱い女の子を無理やり押し倒すなんて、できませええええええええん!

 すっかりスカートの中を覗く気すら失せちゃって、スライムみたいにぷるぷる震えている彼女を見下ろすだけ。

 しばらくそうしていると、急に、鳥娘が舌打ちした。



『ちっ、早く襲えよ。使えねーな』



 今、なんて?

 その時の俺は耳を疑った。動画を見ている今の俺も、耳を疑いたい気持ちでいっぱいだ。


『えっと……?』


 鳥娘が立ち上がり、俺の胸ぐらをつかんだ。

 腕、羽なのに。器用ですね。


『襲えよ』


 いきなり、ドスの利いた声。

 一瞬、誰が喋ってるのかわからなかった。


『…………えっ?』

『てめーは冒険者で! あたしは魔物だーーーーッ!』


 急に口調が変わった。やだ怖い。

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