第4話
「ツルアさん、ただいま戻りました。そちらはいかがでしたか?今日はお一人で担当するとおっしゃってましたから、上手くいくといいなって……」
弾むような、それでいてたおやかな足取りでツルアの前まで来た
金髪碧眼、カサブランカも真っ青な白肌――、艶めく金糸にくっきり輝く天使の輪、いずれ本物の天使にスカウトされるかも―――そんな美少女だが、飛び級で院を卒業、10歳にしてれっきとした正規職員だ。
対する
「才多、首尾はどうだ」
2人増えただけで急に賑やかになったのに気づいたのか、書類から顔を上げたミエノがこちらを見ていた。
足は応接用テーブルの上にある。いつもレモーネさんに怒られるのに、懲りる様子がない。
「はっ
ミエノ支部長を慕ってここへ異動願いを出したという才多は、直立不動に打って変わる。
甲羅が急いで進み出た。
「あの…っ、私がいけなかったんです…今日は私が説得担当だったのに…、うまく話せなくて…」
清楚な刺繍のワンピースの胸元を手で押さえ、うつむく姿はもう名画だ、なのに才多は容赦なかった。
「甲羅の奴、自分一人でいける――なんて言うから任せたら――」
「才多さん…、本当にごめんなさい、私、私…っっ」
コンビを組む相手に強く責められ、繊細な見目そのままに滲んだ涙を隠すように背を向けた瞬間、甲羅の、カントリー風ゆるふわおさげ髪の片方が根元から落ちた―――。
――驚いて振り返った甲羅――…の顔はメッチャ怒っていた。
「ざあっけんなよババアァ!!あんたが竜革のアクセとか物色してやがったからじゃねーか!もって帰れねーもん試着してもしゃーねーだろ!」
「甲羅くん、抑えて抑えて、帰国者の方もいるし――」
割といつものことだが、久土はさすがに驚いて口が開いたままだ。
「ツルアも言ってくれよ!才多の奴、俺が必死こいて話してるのに店の半魚人と盛り上がって――」
「マーメイドっ!女のトキメキ崩すんじゃねええ―っっ」
正真正銘――甲羅の性別は男だ。
肌色と美少女ばりの顔は生まれつきだが、金髪はブリーチ(脱色)、碧眼はカラコン、今日のおさげはエクステだった……両親ともにこの国の人だ。
着用衣装の大半は経費で落ちるという。
大学の専攻と自らを、とことん活かしたいという欲望に合致する仕事がこれだったそうだ。
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