第4話

こんな偶然ってあるんだろうか。

この日僕は、兄貴のパシリでマンガの新刊を買いに街に出ていた。僕の町は、一応「町」がつくけれど、大きな本屋やデパートが無い。高校ができてから、海目当てで人はそれなりに増えた。でも、大学や企業がないから、若者は町を出て行ってしまうんだ。兄貴もこの春町を出て、都内の大学に進んだ。日用品ぐらいなら二軒あるコンビニで事足りるが、新しい物や若者向けの物を買う為には、どうしてもバスを乗り継いで二時間かけて街に出なければならない。

 さて、兄貴が欲しがってたマンガと、偶々(たまたま)目に入った好きな作家の小説を無事買い終えた僕は、昼食を摂ろうと近くのバーガーショップに入った。窓側の席でプレミアムローストチキンバーガーを頬張りながら、人の行きかう交差点を何気なく眺めていた時だ。

目の前をサッと横切ったものから目が離せなくなった。こんなに大勢の人がごった返しているというのに……間違いない。君だ!

青色のワンピースを着た君は、背筋をしゃんと伸ばして雑踏の中を颯爽と歩いていた。ポニーテールが歩みに合わせて元気よく跳ねる。

超高層ビルが立ち並び、灼熱の太陽がアスファルトをジリジリと照りつけ、陽炎が揺れている。羽織った白い薄手のパーカーが光を受けてキラキラ輝いた。ざわめく街を切るように歩く君は、銀色のプールを泳ぐトビウオのようだった。

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